Target8:男装少女
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一つ二つと指折り数えて、それが八を示した処でよくもまぁこんなに人が集まった物だと苦笑を漏らした。
日中の気温が一番高いであろう時間帯に男が七人。そして紅一点であるあたしの腕には膨らませたばかりのビーチボールが抱えられていた。残念ながら皆服装は各々のユニフォームである。目的は昨日サエと約束したビーチバレーボールだった。
「グループ分けどうする?」
「八人だと、二人ずつがいいかな。」
「でも四グループって多くない?」
言い出しっぺであるあたしの問いにサエが返してくれるが、その答えはあまりしっくりこない。とは言え、四人ずつニグループでは味気ないのも事実だ。
「もう一人誘って三グループにしようか。」
「そうだね、それじゃあジローちゃん誘おうか。」
あたしはちらりと横目で自身が声を掛けた面々を見やる。ちょたに宍戸、それから滝。見事な氷帝勢だ。ともすれば必然的に候補となるのは、忙しいであろう跡部と樺地を除いたジローちゃんになる。彼に最初から声を掛けなかったのは別に避けた訳ではなく、単純にジローちゃんが夢の国に旅立っていたからである。
皆が首を縦に振ったのを見てあたしはジローちゃんを探す為にビーチボールをサエに預けて広場へと足を運んだ。でもまぁ、素直にジローちゃんが広場に居る訳はないだろうな。この日当たりだ。海辺から少しばかり移動しただけで噴き出す汗がじわりと肌の表面を湿らす程の気温の中で、ジローちゃんが太陽を遮る物が無い広場で寝息を立てているとは思えなかった。
ブンちゃんが居たからもしかして、とも思ったがそんなに都合よくは無かったらしい。ぐるりと広場を見渡しても見慣れた金色の髪は視界に入らなかった。ジローちゃんを探す為に雑木林に行っても良いが、そうするよりも誰か他の人に声を掛けた方が良いだろう。あまりここで時間を使うと肝心なビーチバレーをする時間が無くなってしまう。
どうしたものかと唇を横に伸ばし、言葉なく唸っていると背後から汐原、と一言言葉を投げられる。それに従い振り向くとこちら側ではあまり見る事の無い姿が佇んでいた。
「真田、どうしたの。幸村に用ならどこに居るのか知らないよ。」
「いや、俺の用は既に終えている。」
「あぁ、そうなんだ。じゃああたしに用?」
真田の帽子を自力で返せなかった事への謝罪なら船の中で済ませたし、その事については許しも貰っている。ぐちぐちと真田が掘り返すようには見えないし、何かしら山側からの伝言でもあるのだろうか。
真田はあたしの問い掛けに少しばかり言葉を詰まらせた。
「……いや、ここは日差しが強い。」
「そうだね。」
真田の言葉に首を傾げて同意する。しかしながら、真田の言葉の真意は掴めなかった。
別にここの日差しが強いのは今に始まった事ではない。ならきっと、真田の言葉には他の意味があるのだろうか。あったとしてもなかったとしても、それはあたしには分からなかった。