Target1:氷帝学園男子テニス部
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汐原と別れて足早に戻った教室。退屈な授業になんだか眠る気にもなんなかったから、一人ボーッと外を見ていた時のこと。
俺の席からは中庭がよく見える。そこに体操着のまま汐原が蹲って、全身で落ち込んでますと主張していた。
(……何なんだよ!)
思わず舌打ちをする。
だって、おかしいだろ。跡部から、汐原が俺たちの事を知っているとは聞いていた。でも、それだってどこまで知ってんのかとか、何で知ってんのかは誰も知らないわけで。
俺は、それが知りたかった。汐原のことを誰よりも、知りたかった。誰よりも汐原に俺の事を知って欲しかった。
そう思って話しかけても、何を聞いても。汐原は質問に答えはするが、俺の事を知ろうとはしてくれない。正直、面白くない。
そんな不満が爆発したのは、偶然だった。
汐原の開けたドアが俺にぶつかり、その反動でバランスを崩した身体がボール籠を蹴り飛ばしたあの日。別にそれ自体は俺も不注意だったし、汐原の所為だとは思ってねぇけど。……けど、屈んで視線を合わせる仕草とか謝る前に俺の怪我を心配する仕草とか、子供扱いされてるようで。俺の事なんて興味ありませんと言われてるようで。半ば八つ当たりのように汐原の手を叩いた。
授業が始まって……汐原が中庭に蹲ってから、結構な時間が過ぎたと思う。先生が話す内容なんて全く耳に入らない程に、窓の外の汐原しか目に入らなかった。
胸が締め付けられる。
"俺たち"のマネージャー。
それを俺は、"俺だけ"の汐原琹にしたかった。
汐原を一番知ってんのは俺で、俺を一番知ってんのは汐原で。そうが良かった。
気がつけば終業のチャイムが鳴る。手元のノートは真っ白だった。クソクソ!また侑士にノート見せてもらわねぇとじゃねぇか。
自業自得だとか、そんなことは思いつかねぇで、それもこれも全部汐原の所為だと苛立ちを含んだ視線を窓の外へ投げた。
「……は?」
ぽかんとせずにはいられなかった。
さっきまで中庭に居たのは確かに汐原一人だったのに。今は、すぐ側に跡部が居て。そんで、二人はキスをしていて。
何を考えるよりも先に、がたりと強引に席を立つ。俺の方が、俺の方が……!
廊下に出て中庭へと、走る。
途中で予鈴が鳴ったが無視して走った。早く、汐原に会いに行かねぇと!
「……汐原!」
中庭について木陰を覗くと跡部の姿は無くて、驚いた表情を浮かべる汐原の頬には涙の跡が付いていた。俺が!俺が誰より先に汐原を好きに、なったのに!
誰よりも好きなのに、汐原を泣かせたのは間違いなく俺だった。
「……わりぃ、汐原。」
そう言いながら、泣きそうなのは俺の方だった。