Target8:男装少女
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風呂上がりにベランダで火照る身体を冷ましていた。昨日の土砂降りが嘘の様な雲一つない田舎の夜空には、キラキラと星が輝いている。あぁ、流れるかも、と思った時には既に一雫の星が落ちていった。
(テニスの王子様のキャラクターに会いたい……なんて。)
一瞬の星の軌道を追い掛けるように頭を過ぎった思考は余りにも馬鹿げていた。
叶うはずなんてない。況して彼等は"キャラクター"だ。架空の人物。作られた存在。
そんな事は分かっているけれど、会ってみたいと純粋な願い事が無意識の内に湧き出した。じわりと滲んだそれは妙に心臓を跳ねさせる。
もしも彼等に逢えたなら、一緒にゲームをしたい。昼には一緒にご飯を食べて、テストの点数を競ってみたりして。友達みたいに過ごしてみたい。
「男子の格好をして仲良くなって、ふとした時に女子だってバレて意識されるとかも面白そう。」
ふふっと思い描いた物語に笑いが込み上げる。それは有り得ない妄想を繰り広げる自分への嘲笑だ。でも、妄想するだけなら誰にも迷惑をかけない。ならいいじゃないか、と雲一つ無い夜空に広がる星空の様に空想を広げた。
あの時の空と
「性別を確認された時はちょっと吃驚したけど……。」
いつの間にか私が存在していたのは彼等の居る世界だった。有り得ない事が日常の一部になって、私の妄想を叶える為に"男子中学生"として彼等に近づき、気さくなやり取りができるようにまでなった。そんな時に舞い降りてきた、合宿というチャンス。
寝食を共にすれば、性別がバレる可能性も上がる。私を女子として意識してもらうチャンス。けれど、そのチャンスは悉く汐原さんに邪魔をされているのが気に入らない。
海側と山側両方に関わろうとするのも、同室の人達が汐原さんの話題ばかり口にするのも、立海の面々が汐原さんに関心を持っているのも。全て気に入らない。加えて、その面々の一部には確かな好意が見て取れる。ムカつかない訳がない。
汐原さんに邪魔をするつもりが無くても、彼女の存在自体、私からしたら邪魔なのだ。私を彼等に見てもらう為に。
それなのに朝起きると既に同室の三人が起きていて、着替えを躊躇していると起床時間は過ぎていた。初日から遅刻だ。これは印象が良くないだろう。
先に行く、と出て行った三人を見送ってから身支度を済ませ山側の食堂へ向かうと、何故か居る汐原さんと金ちゃん、白石さん、柳生先輩に頭を下げる水羽さんの姿。あぁ、水羽さんも遅刻したんだな、と思うよりも先に汐原さんの姑息さに腹が立つ。
どうして、海側の貴女が此処に。
来る必要なんて、手伝う必要なんて無いでしょう。
そうして自分の株を上げて私達を陥れるのか。
ぐるり、ぐるり、と思考を埋めて最終的に舌打ちとして吐き出された。
(水羽さんは良い。でも汐原さんはどうにかしないと。)
そうでなければ、私の理想は叶わないのだから。