Target6:腐少女
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今、忍足は何て言った?
忍足の返答を搔き消すために無遠慮に開いた扉は、それなりに大きな音を立てたものの忍足の言葉を掻き消してはくれなかった。
忍足の好きな人、元井だと答えるとばかり思っていた。ぱちくりと瞬きを一つして、ゆっくりと忍足の言葉を呑み込む。落ち着け、と心中で繰り返していると元井があたしを突き飛ばして廊下を駆けて行った。
「っ、た……っ!」
硬い廊下に打ち付けた腰を摩ると、忍足が少し腰を折って右手を差し出してくれる。左手を膝に当てて屈み、此方を伺うように視線を合わせるその様に何故か此方が泣きたくなって、直ぐにはその手を取れなかった。
多分、ずっと忍足が隠していたのはこれだったのだろう。そしてきっと、これからも隠していくつもりだったのだ。あたしに差し出すその手が少し震えている。その手を取ってしまえば、あたしはもう、忍足の親友にはなれない。
「……忍足、さっきの、本当なの?」
忍足はあたしに差し伸べていた手を引っ込めて、廊下に座り込んだままのあたしの足を跨ぐようにして膝をついた。先程より彼の視線の高さが自身の物と近くなる。それなのに微妙に合わないのは、忍足の瞳がゆらゆら揺れているからだろうか。もしかしたらあたしの方が合わせようとしていないのかもしれない。
「冗談や、って言いたいんやけどな。……堪忍な。もう、言えへんねん。」
琹ちゃんと親友になんてなりたない、と続ける忍足の声が震えている。あの忍足が、だ。今にも泣き出しそうな声であたしに訴えてくる。
ずっと、ずっと、あたしの親友になるという言葉が、彼を傷つけていたのだ。あたしの無責任は言葉が、こんなにも彼を臆病にさせてしまっていたのだ。
「ごめん、忍足。ごめんね。」
悪いのはあたしだ。全部全部あたしだ。
あたしが無責任に彼の親友になると言わなければ、彼は自由にあたしを好きだと言う事も、あたしを嫌いだと言う事も出来たのに。あたしが"親友"なんて肩書きを押し付けてしまった所為で、忍足はあたしに触れる事も、あたしを振り払う事も出来なくなってしまったのだ。
「……ッ、ごめんね、忍足。」
いつからかなんてのは分からない。あたしを名前で呼んだ時には既にそうだったかもしれないし、あたしが氷帝の物だと宣言した時には、まだそんな感情を抱いていなかったかもしれない。こればかりは忍足にしか分からない。それでも、あたしの言葉が彼を
謝罪だけでは足りない。あたしを一番好きだと言ってくれる忍足の前で、あたしは跡部や滝にキスをした事もある。彼の気持ちを知らなかったとはいえ、それはとても残酷な行為だ。