Target6:腐少女
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ジローも樺地も可笑しい!跡部が好きなら跡部だけを選べば良いのに。なんであの女なんかも選ぶの。皆の事が好きすぎて選べないのは跡部だけの特権なのに!
苛々する。汐原のあのポロポロと涙を静かに流す表情がリフレインする。アイツに泣く資格なんてないのに。アイツは加害者で、被害者は跡部達だ。
汐原が部室を出ようとした時、丁度その背後に樺地とジローの姿が見えて、それに汐原が気がついていないようだったから、チャンスとばかりに挑発をした。汚い言葉の一つや二つ投げてくれれば万々歳だったが、予想外に汐原はその手を振り上げる。これでコイツの本性を樺地達に見せつけられる、と思ったのに。
「琹ちゃんはいつも通りだC。」
ジローの言葉に目を見開く。いつも通り、なんてそんなの。じゃあ跡部達は汐原の本性を知っていて尚、コイツにベタベタとしていた訳?なんで、なんで。可笑しいでしょ、そんなの。こんな性悪が跡部よりも良いなんて。
「……じゃあアンタ達は跡部よりコイツの方が好きだって言うの?」
「跡部も好きだけど琹ちゃんも好き。それってさ、そんないけねぇの?」
違う、違う。あたしが欲しい言葉をそんな言葉じゃない。
汐原を背後から抱きしめるジローの表情は、多分あたしにしか見えてないだろう。ジローの目はいつもの眠そうな物ではなくて、ギラギラと、俺達の邪魔をするなと言いたげな物で。違う、違う。あたしは彼等を救おうとしているのであって、邪魔をしてるんじゃない。
「跡部が好きなら汐原なんて要らないでしょ?!」
「……跡部さんと、琹さんは、違います。……どちらかを、選ぶ事は……出来ません。」
違う違う、と頭を振って胸中に滲み始めた不安を振り払う。邪魔なのはあたしじゃない、汐原だ。跡部達にはあたしも汐原も必要無くて、汐原をテニス部から追い出したらあたしもマネージャーを辞めて、それでハッピーエンドの筈なのに。
ジローの態度も、樺地の言葉も、必要無いのはあたしだけだと言っていて。違う、違う。あたしはこんな事望んでいない。あたしはただ、跡部だけが愛される世界を望んだだけなのに。
彼等の言葉が相当嬉しかったのか、ジローに抱きしめられたままの汐原がはらはらと涙を流す。あぁ、ムカつく。その場所は跡部の物なのに。一体どうしたらそこを取り戻せるの。
反射的に踵を返して走り出す。一度レギュラーの部室に戻り着替えるでもなく荷物だけを取り出すと、あたしは拳でロッカーを叩いた。ムカつく、ムカつく。
ジロー達の一番は、跡部でなくてはいけないのに。