Target6:腐少女
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眠って起きてを幾度となく繰り返しても、あたしの夢は覚めなかった。現実と夢では時間の進み方が違うのだろうか。色々考えてもみたけれど、結局覚めないものは覚めないのだし、あたしもまだこの夢を楽しんでいたいしで好都合だった。ただ、つまらない授業と面倒くさい人間関係と、妙にリアルな生理現象が少々鬱陶しいけれど。概ね満足だ。
今日もまたテニス部の部室で汐原のユニフォームに着替え、見せ付けてやる。既に授業で使う体操着は手元に届いているから着替えが無い訳ではないが、あたしがユニフォームを着て笑ってみせると汐原が悔しそうに顔を歪めるのが面白くてそのまま借りている。洗い替えが無い所為で毎日洗濯をしなければならないのが面倒だが、汐原の歪んだ顔を見るとそんなストレスも吹っ飛んだ。我ながら良い性格。自分でも新発見だ。
いつも通りプロジェクタールームに寄り道をする汐原を置いて先に準レギュラー達の部室に入ると、汐原に教わった通り冷蔵庫からドリンクボトルを取り出す。中身は汐原が今朝の朝練中に作っていたスポーツドリンクだ。今すぐにでも跡部達の元へ届けて観察をしたいが、ハードな運動をしている彼等に冷た過ぎるドリンクは良くないらしい。一度汐原にそう指摘されてからは大人しく部室内の椅子に腰を掛けてドリンクの温度が戻るのを待っている。汐原の言う事に従うのは癪だが、あたしは別に跡部達の邪魔をしたい訳ではないから。
「……元井、キミ、この世界の人間なの?」
「は?何言ってんの。」
ぼーっと今日こそは跡部の間接キスフラグを、と考えていると、無言で明日の朝練分のドリンクを作っていた汐原が急に話しかけてくる。珍しい。今日はこれから雨でも降るんじゃないだろうか。否、と自分の考えを瞬時に否定した。
汐原の視線は相変わらず手元のボトルに向けられていて、あたしと雑談がしたいというよりは、絶対に確認しなければいけない事項を確認していると言った方がしっくりくる。けれど、あたしにそれを答える義理は無い。第一、此処は夢の世界なのだからこの世界の住人なんて居る訳が無い。
「あたしは、違うよ。……信じるか信じないかは、どうでも良い。あたしの世界では跡部達はとある漫画の登場人物だったんだ。」
シンクに向かっていた汐原が此方を振り向く。その
初めて見る汐原の表情。どれだけ嫌がらせをしても、ユニフォームの件以外は呆れた反応しか見せなかった汐原が、じわりと涙を滲ませ困ったように眉をハの字に下げている。どうして。訳が分からない。
最近の、あたしの行動を放置していた汐原じゃない。コイツは誰だ。
あたしが知っている汐原は、当たり前のように跡部達の中心に居てムカつく笑顔を浮かべるような奴だ。こんな、こんな全身で自分の話を信じてと訴えるような奴じゃない。
あたしは違う違うと誰かに言い訳をしながら、汐原にツカツカと近寄り、苛立ちを隠そうともせずに胸倉を掴んで自分の方を向かせる。そのまま冷蔵庫に汐原の背中を叩き付けた。
汐原が居る世界なんて、あたしの望んだ夢じゃない。なのに跡部から皆を奪っておいて、どうして自分が被害者ですと言いたげな顔をする。自分勝手だ。勝手にあたしの夢に出てきて、あたしの理想の邪魔をして。それなのに被害者面で同情を誘うような事をする。
汐原は加害者だ。あぁ、腹が立つ。