Target6:腐少女
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誰かに呼ばれている気がする。
少しだけ浮上した意識の端に聞こえる声は、耳触りの良い低音の、関西弁。
「……んぁ、忍足……?」
しばしばする瞼を数ミリ程持ち上げ、その声の主を確認するとぼんやりとした視界の中に見慣れた丸眼鏡が反射した。
「琹ちゃん、起きぃや。ソファで寝てたら風邪引くで。」
「んー……。」
忍足の声が心地良い。子守唄のようで、また意識が沈みそうになる。数ミリだけでも開いていた目に、再び幕が下りた。
「琹ちゃん。」
「おき、る……。」
「起きれてへんやん。」
ゆさゆさと肩が揺すられる。忍足の大きな手に触れられる肩が暖かい。あぁ、誰かと一緒に居るのってこんなにも暖かいんだな、と漠然と思うがそれすらも宙に浮いた。
忍足が呆れたようにほぅ、と一つ溜息を吐いてむにむにと指先であたしの頬を弄ぶ。あたしが身動いだ所為で頬にかかる髪を優しく払い、何が面白いのかあたしの頬に掌を添え、親指で頬を撫でる。時折悪戯に頬を摘んだかと思うとまた頬を撫でた。
「おし、たり……。」
「ん?」
触れている方は良いのだろうが、此方としては擽ったくて仕方がない。けれどこの温もりを手放してしまうのは惜しくて、手探りで自分の掌を重ねた。そうしてしまえば、自由気ままに指先を動かす事は出来ないだろう。
彼の長い指先に自分の指を絡め掌を押し当てると、頬だけではなく掌にも温もりが伝わって、ほぅと溜息が漏れた。
「琹ちゃん、起きひんの?」
「起きる……。」
そう言いながらも、相変わらず瞼は重くて持ち上げられない。意識もふわふわとしている。ただただ、あたしに触れる忍足の熱を甘受していたいとそれだけが頭を埋めている。
「琹ちゃん。」
するりとあたしの頬に当てられていた掌が抜き取られる。少し名残惜しく思っていると、彼の手は優しくあたしの肩を叩いた。ぽんぽんとリズム良く上下する掌に合わせてゆっくりと呼吸を繰り返すと、それだけでもう瞼を持ち上げる気すら失われる。次第に沈んでいく意識に身を任せた。
「ゆっくり休んだらええで。ちゃんとベッドまで運んだるから。」
うん、と返事をしたつもりだが、彼には伝わっただろうか。
あたしが最後に覚えているのは、唇に触れた柔らかい感触とふわりと身体が浮いた感覚だった。