Target6:腐少女
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あたしが水場で明日の分のドリンクを作っていて手が離せないのをいい事に、元井がレギュラーの分のドリンクの入った籠を持って部室を出て行ってしまう。あまりにも唐突過ぎて、直ぐには理解が出来なかった。
あのドリンクは先程冷蔵庫から取り出したばかりで、温度も大して戻っていない。それを激しい運動をしている跡部達に飲ませるのはあまり良くないし、それに、あの子。
「タオル、持って行ってないんだけど。」
籠にはドリンクボトルしか入っておらず、タオルはまだいつもの場所に置いてあるままだ。
あたしがレギュラーは放っておいて、と言ったのを無視して行くのも腹が立つが、人から仕事を教えて貰っておいて最後まで聞かないのも腹が立つ。多分、先程のあたしの説明も真面目に聞いていないだろう。毎日使う備品の場所も教えたのだが、明日から大丈夫なのだろうか。あたしは二度と同じ事を教えるつもりはない。
仕方なくあたしはタオルだけを抱えてコートへと向かった。今の時間なら丁度一段落ついているだろう。タオルを手渡す序でに元井を回収するのが効率的か。今朝に引き続いて元井の所為でやるべき事が溜まっていく。いつか押し寄せが来る前に、何処かで折り合いを付けなければ。
あたしが元井を無視すれば良いだけの話だが、元井が適当な事をすれば、その皺寄せが行くのは跡部達だ。ただでさえ彼等はこの関東大会で敗北という壁を乗り越えなければならないのに、余計な障害に引っかかって欲しくない。だから、それをあたしが取り除けるならそうしたいのだ。
(なんて、綺麗事だよなぁ……。)
それらしい言い訳を並べたところであたしの本心は誤魔化せない。幼稚で我儘だが、あたしの本心を一言で表すなら、人の物を取るな、とそういう事だ。現に効率だけを求めるなら、中途半端でも作業を一度中断して元井を呼び止めれば良かっただけの話。けれどあたしは、彼女を一人で跡部達に接触させない為に、タオル忘れてたよ、と口実を作ってコートに向かう。それで作業が進まないと言うのだから呆れた物だ。
「元井、タオル忘れて、る……って、あれ?元井は?」
コートに着いた時には元井の姿は其処に無く、ドリンクの入っていた籠がぽつんと置いてあった。暗黙の了解である以上、元井が知らないのも当たり前だが、レギュラー達の練習は一段落ついていて各々がドリンクボトルに口をつけていた。手渡したというよりは、各自籠から自分のボトルを取ったのだろう。まだ水分補給をしていない人も見受けられる。
「アイツならドリンク置いて直ぐ、部室に戻るって走ってったぜ。」
取り敢えず近くに居たがっくんにタオルを差し出すと、がっくんはそれを受け取る。それから彼がまだドリンクを手にしていない事に気がついてがっくんのドリンクを差し出した。
「サンキュ。」
「あたしがコートに来るまでに元井とすれ違わなかったんだけどなぁ。」
あたしは首を傾げる。不自然だ。跡部達に取り入るならこれはチャンスの筈で。それなのにドリンクを置くだけで退散している。しかも部室に戻ると言いながら、何処か他の場所に行っているなんて。入部早々にそんなあからさまにサボるだろうか。
元井の思考回路は理解出来ないから、可能性はゼロでは無いが。ただ考えられる可能性はもう一つあった。