Target6:腐少女
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気にしてないから、とちょたを宥めてもう一つのパンに手を伸ばしたところで、漸く残りの三人が顔を見せた。この時点で昼休みは半分程過ぎてしまっている。あぁ、しまった。タオルを干しに行かないといけないのに。
あたしは急いで残りのパンを頬張り、一緒に買っておいたカフェラテで流し込んだ。
「ご馳走様!跡部、部室の鍵持ってる?」
「それなら今朝日吉に預けてまだ返って来てねぇから日吉が持ってる筈だ。」
ちらり、と隣に視線をやると日吉がポケットから部室の鍵を出す。それを受け取って立ち上がるとジローちゃんとがっくんからブーイングの声が上がった。
「Aー……琹ちゃん行っちゃうの?俺、膝枕して欲Cー!」
「お前、折角全員揃ってんのによー!」
「ごめんね、朝タオル全部干し切れなくてさ。今の内に干しとかないと乾かないし。」
タオル無いと困るでしょ、と付け加えるとぶーと文句は言うものの、それ以上引き止められる事は無い。その代わりに今度は二年生から手伝いの申し出があるが、それは丁重にお断りする。彼等はまだ食事の途中だ。
あたしはパンの入っていた袋に潰したパックを入れ、後で捨てようと袋の口を縛る。そこで、あ、と声を上げた。今なら軽く言える。
「ねぇ、跡部。」
「何だ。」
「部活の時の着替えさ、やっぱり一緒じゃダメ?」
「あかんに決まっとるやろ。琹ちゃんは女の子なんやで?」
即答したのは跡部では無く忍足で、その言葉は以前に同じ提案をした時と同じ物だった。忍足の表情は呆れを多分に含んでいる。
彼の主張は尤もで、あたしの主張が可笑しいという事は重々承知だ。あたしだって今まで男子に一緒に着替えようなんて言った事は無い。けれど今回は、あの子、日吉のクラスに来た転校生が跡部達をあたしから奪おうとしているのなら、あたしが着替えているその時間は絶好のチャンスになる。その他の時間は邪魔が出来るかもしれないが、あたしが着替えているその時間だけはどう足掻いても彼女を野放しにしてしまう。それだけはどうしても嫌だった。
「今朝日吉と一緒に着替えたし、もう良くない?」
「は?!お前何してんだよ!」
「……これが狙いだったんですか。」
日吉が眉間に皺を寄せ不快感を露わにした表情を浮かべる。その頬は今朝の事を思い出したのか、少し紅潮していた。じとりと立ち上がったあたしを見上げるようにして睨み付けるが、その頬の所為で怖くはない。寧ろ、胸中に広がるのは愛しさだった。
「今は時間無いからさ、考えといて。」
口角を上げ、目尻を下げ、完璧な笑顔を作る。考えといて、と言いながら、譲る気は無かった。