Target6:腐少女
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夜、寝る時に枕の下に物を入れると、その物の夢を見るという有名な話。あたしはそれを試すべく、枕の下に物を入れた。薄い冊子は、所謂同人誌というヤツで、
そう、あたしは自分が愛されたいのではない。跡部が愛されている所が見たいだけ。夢で良いから、と枕の下に入れた同人誌は十分なくらい効果を発揮してくれた。
目を覚ますと、そこは知らない部屋で戸惑いながらもリビングらしき部屋を見つける。そこには少々分厚い冊子とパンフレット、紙切れが一枚置いてあった。
取り敢えず紙切れの方を手に取ると、手書きの地図だった。目的地の場所は黒い点が打ってあるだけで、名称迄は分からない。
次に隣の分厚い冊子の上に乗っているパンフレットに目をやる。そこであたしは目を見開いた。
「氷帝学園……!」
慌てて分厚い冊子を確認すると、その冊子は氷帝学園への転入手続きについてだった。そしてその冊子の下には、転入手続きが終わった旨の書類がクリアファイルに挟んで置いてあった。名前も間違いなくあたしの物で、夢だと分かっていながらもワクワクと浮き立つ心が抑えきれない。あぁ、跡部が愛されるのを間近で見られる!
あたしは一度先程の見知らぬ部屋に戻り、クローゼットを確認する。そこにはいつも通りの見慣れた制服しか掛かっていなかった。
「まぁ、夢だし氷帝の制服じゃなくても大丈夫だよね。」
今身につけているのは、寝る前に着替えた寝巻き。まぁ夢なのだし、氷帝の物でなくても問題はないだろう。制服だし。あたしは寝巻きを乱雑に脱ぎ捨て、制服に着替えた。そしてそのまま時間を確認するでも無く、先程机上に置いてあった手書きの地図を片手に外に出る。早く早く!
最初は誰だろう。きっと跡部は車通学だから、正門を潜った所で他のテニス部員に声をかけられるに違い無い。それが忍足だったら、あの低音ボイスでおはようさん、とでも挨拶をして、それから耳元に唇を寄せ、今日も可愛ええなぁ景ちゃん、とか。あー、ヤバい。容易に想像できる。日吉でも良い。遅かったですね、跡部さん。部長である貴方がそんな事でいいんですかとか憎まれ口を叩きながらも、安い挑発してんじゃねぇ、とか跡部に構ってもらえるのが嬉しいんでしょ!
鳳だったら、宍戸だったらと荒くなる鼻息をそのままに地図をなぞり、氷帝に辿り着く。あたしの居たあの部屋からは徒歩圏内で、直ぐに着いた。正門を潜ると、広すぎる敷地にちらほらと数えられる程度の生徒が歩いている。その中にラケットバッグを背負っている人物を見つけて目を凝らした。あの青味がかった長髪はもしかして!
「え……?」
その人物は確かにあたしが望んでいた人物だった。けれど彼は何故か隣の女と手を繋いでいて。
違う違う。忍足が手を繋ぐのは跡部でしょ?どうして。だってあんな女、原作に居なかった。
忍足が何かに気がついたように足を止め、隣の女が声を張り上げる。振り向いたのは、滝だった。あぁ、あの女さえ居なければ完璧なのに。忍滝。やっぱり跡部が一番愛されるべきだが、忍滝も良い。あぁ、そうか。あの女は当て馬なんだ。滝に気持ちを伝えたいけど、男同士である事を気にして素直になれない忍足が、滝の代わりにあの女と付き合ってるんだ!今後何やかんやあって、滝と思いが通じるやつだ。忍足が女の子が好きなのは知ってるよ。でも俺、もう我慢出来ない、とかそんなやつだ!それなら仕方ない。
もう少し眺めていたいけれど、取り敢えず職員室と思しき場所を探さなければ。転校を経験した事は無いからどうすれば良いのか分からないけれど、まぁ職員室に行けば何とかなるでしょう。
あたしは少し迷いながらも職員室を見つけ、手続きを済ませた後に先程忍足を見かけた場所まで戻る。きっとコートもこの辺りなんだろうと当たりを付けて探すと、外周をランニングする跡部達を見つけて、歓喜の声を上げた。滴る汗が美しい。跡部達は走り終わったのか立ち止まる。そう、この後きっと、樺地が跡部にタオルを差し出して優しい手つきで彼の汗を拭うんだ。そしてその二人の入り込めない空気にジローが嫉妬して……、とそこまで考えたのに。実際にタオルを片手に駆け寄って来たのは、朝も見かけたあの女。しかもジローと向日にキスまでされている。違う、その場所には跡部が居るべきであって、あんな女が居る場所じゃない。
あたしはあの女が何者なのかを探るべく、コートを後にする女の後を追った。