Target6:腐少女
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「ドリンクとタオル置いとくよー……って、何で全員走り終わってんの。」
籠に纏めた八人分のタオルとドリンクを置いて早々に退散しようとした。が、それは出来なかった。あたしがうだうだと考え事をしていた所為で少し遅くなったのは認めるが、早すぎやしないか。現に他の部員達はまだ走っている人もいる。
「琹ちゃん、俺寝ないで頑張ったCー!」
褒めて褒めてと擦り寄ってくるジローちゃんを受け止めて、彼の柔らかい頬に唇を寄せる。ちゅっとリップ音を立てると仄かにジローちゃんの香りが鼻腔を擽った。
「大変良く出来ました。ご褒美ね。」
ぽかんと、ジローちゃんが事態を理解する前に他の人達にドリンクとタオルを手渡して行く。彼等がまだ走っていたのなら置いて行くだけで良かったのだが、一区切り付いている時には手渡しをするというのが暗黙の了解だった。多分、跡部があたしをレギュラー専属にしたのもそういう理由なんだろう。少しずつ、彼等の束縛が強くなっている。
一通り手渡して籠が空になった頃、ジローちゃんは漸くあたしのした事が理解出来たのかぽかんと開いていた唇を結んで、今度は彼があたしの頬にリップ音を立てた。お返C、と笑う彼は邪気の欠片も無い。
「じゃああたしはタオル干してくるから。空になったボトルとか使ったタオルは籠に入れといてね。」
「待てよ、琹。」
少々押している時間に、慌てて部室に戻ろうとするとがっくんに呼び止められる。逸る気持ちを押し込めて振り向くと、あたしの頬に赤く染めた頬を寄せ、リップ音を立てた。
「お前も、大変良く出来ました。……ご褒美。」
した張本人があたし以上に頬を赤く染めるものだから、加虐心が煽られる。ジローちゃんみたいに軽く頬に口付けてお返し、と笑ってあげたいのにじわりと滲んだ悪戯心が邪魔をする。がっくんの、あの、
ごくりと生唾を呑んでその欲求をやり過ごす。あぁ、自分の感情が気持ち悪い。
結局あたしは、彼の頬に唇を軽く押し付け、お返し、と笑ってみせた。
あたしはニヤける頬を奥歯を噛み締める事で引き締め、漸くタオルを干す為に彼等に背を向ける。その背中を追って来たのは、見知らぬ女の子だった。
「ねぇ、アンタ何なの?」
一度部室に戻るとウォータージャグが無くなっている事を確認して、洗濯籠を持ち、部室棟の裏手に回る。コートから距離がある所為か、ここはとても静かだ。
タオルを干さなければ、と一枚手に取ると、見慣れない制服の女の子に声をかけられる。その子の眉はキッと釣り上げられた、怒りの表情をしていた。それはまるで、あたしを邪魔だと言う準レギュラー達のようだ。
「男子テニス部のマネージャーだけど……。」
そうじゃなくて!と声を上げる彼女は、多分、唯ちゃんと同じく、あたしからテニス部を奪いたいんだろう。じとりと自分の視線が狭くなるのが分かった。