Target6:腐少女
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忍足と手を繋いで登校する、いつも通りの朝。
朝練に参加する為に一般生徒よりは少し早い時間に正門を潜るから、広い敷地が余計に広く見える。その広い敷地を忍足と歩く少しだけ早めの朝が、実はあたしのお気に入りだったり。
忍足と二人だけの時間というのは、思ったよりも少ない。夕食時には忍足ママと、時折忍足パパも居るし、食事後に忍足宅に長居する訳にもいかないからまったりと過ごす事もない。下校時間は誰かしらが一緒に帰る事も多いから、確実に二人きり、というのは登校のこの時間しかない。電車を降りてから正門を潜るまでの時間。それがあたしにとっては大事な時間だった。
「あれ、滝やん。」
今日もまた終わってしまったその時間に想いを馳せていると、少し先の方に滝が歩いていたようで忍足が声を上げる。低いが故に声が通り難い忍足に変わってあたしが彼を呼び止めた。
「滝、おはよう!」
少し声を張り上げて、忍足と繋いでいない方の手を振る。肩にかけていた鞄の持ち手がずり下がった。
滝にあたしの声が届いたのか、彼はゆっくりと振り向く。その際にはらりと広がる彼の長い髪を押さえるように右手を耳元に添えた。それから、おはようと。
「相変わらず仲良いね。二人とも。」
「親友候補だからね。」
当たり前のようにするりと零れた言葉に笑みを添えてみるが、その言葉が張りぼてのようなものである事は分かっていた。
互いに遠慮して何か隠している事がある。何かをしたい、して欲しいと思った時に最初に声をかける相手もお互いではない。あたしの考える親友像とは程遠かった。
ふふふと笑いながらも足を止め、あたし達を待ってくれている滝に二人して駆け寄り並んだ。あたしを真ん中に挟むようにして滝と忍足が並ぶ。もしも昌山がこの場に居たのなら、きっと囚われの宇宙人みたいだとでも笑い飛ばすのだろう。そしてそれにあたしはむっと頬を膨らませて、全体重をかけた踵で昌山の足先を踏んでやるのだ。そんな事が当たり前のように頭に浮かぶ。けれどもう、それは叶いそうにない。
あたしは昌山の事を忍足達に話していない。初対面の時に男子を探しているとは言ったが、その男子が昌山である事も、そして昌山が見つかった事も言っていないし、付け加えるとこの世界が漫画の世界だとも話していない。いつかは話さないといけないだろう。今のあたしには秘密が多すぎる。それはきっと忍足も同じで。
「あぁそうだ、忍足のクラス英Ⅰの授業なかったよね?和英辞書貸してくれない?」
「ええで。朝練終わったら俺んとこ寄りぃ。」
了解、と口にする滝と、手を振って別れる。あたし達はレギュラーの部室。滝は。
じり、と罪悪感が胸を焦がした。あたしには、秘密が多すぎる。