Target5:他校男子テニス部
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迷った。
宍戸達と人生初の夢の国に赴いたのは良い。そこで存分に楽しんで有頂天になっていたのも認める。けれど、帰り道で彼等と
夢の国の最寄り駅に着いて直ぐ、トイレに行くと言って一人で行動したのが悪かった。
慣れない駅な上に混雑している中で、特徴も無いあたしを探すのは一苦労だろう。逆に、此方からは金髪に赤髪と目立つ彼等を探せば良いのだからと動き回ったのも災いした。
スマホで連絡を取ろうにも、散々写真を撮った後では充電は残っておらず、ホームボタンを押したところでうんともすんともいわない。コンビニで充電器を買おうにも、そのコンビニすら何処にあるのか分からない。
「出口、どっちだろ。」
視線を左右に、時折上に動かして、取り敢えず駅から出ようと出口を探す。外に出られればコンビニくらい近くにあるだろうし、何より少しは人も減るだろう。スマホを充電してから、一緒に来た彼らに連絡を取ればいい。
そう自分に言い聞かせても、徐々に胸中に不安が広がってくる。迷子になった子供のようだった。実際迷子になっているのだけど。
ひゅんと縮こまった心臓を胸元を掴む事でやり過ごし、不安に呑み込まれないように一つ深呼吸する。毎度の事ながらあたしの心臓は小心過ぎるだろう。中学生にもなって、迷子になったくらいで泣きそうになるなんて情けない。きゅっと唇を結んだ。よし、涙は流れていない。
ぱちん、と両手で頬を叩いて上を見上げる。出口までの案内看板はここには無いようだ。矢張りもう少し移動してみようと一歩踏み出すと、後ろから聞き慣れない声で呼び止められた。
「あ、居た居た。汐原さん!」
「え、あたし?」
確かに呼ばれた名前はあたしのものだった。振り返って確認した姿もあたしの知っている人だったけれど、彼とあたしは初対面の筈で。人違いかもと思ったけれど、彼は一直線に人波を掻き分けてあたしの方に寄ってくる。その行動は、あたしを汐原琹だと確信していた。
「えと、ごめんなさい。初めましてですよね?」
「うん、初めまして。俺は佐伯虎次郎。宜しく。」
鼓膜を揺らす彼の声は、それだけで頬が熱くなる。一度彼が微笑みを浮かべれば、一瞬で目を奪われた。
ここは夢の国の最寄り駅。彼がここにいる事自体は不思議ではない。彼は千葉に住んでいるのだから。けれど、どうしてだろう。ここが夢の国の最寄り駅だからか、それとも彼が無駄に男前だからだろうか。先程までの喧騒が僅かに遠くなったような気がして。
早い話が夢なのではないかと思ってしまったのだ。