Target5:他校男子テニス部
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「あ、じゃあ汐原さん、一緒に行きませんか?」
俺の言葉に目の前の汐原さんの頬は目に見えて紅潮した。
別に考えなしに言ったわけじゃない。折角くれるというチケットを断るのもなんだったし、杏ちゃん以外の女の子を誘うなんてのは論外だった。だから。
汐原さんとなら、杏ちゃんも跡部さんと付き合っている事を知っているし誤解されることもないだろう。
杏ちゃんに誤解されることも無く、汐原さんもチケットを無駄にすることはない。まさに一石二鳥の提案に、返事をしたのは汐原さんではなく、隣に居た鳳だった。
「……琹さんは恋愛映画が苦手なんですよね。」
「え、うん。……そういう事だからごめんね、他の人誘ってくれたら嬉しい。使わなかったら人にあげてもいいから。」
大人しく口を噤んでいたのは何だったのか、隣にいる汐原さんには見えないように鋭い視線を投げてくる。それは明らかに、嫉妬だ。
(おいおい……。)
どんな修羅場を生きてんだよ、と口を吐きそうになった言葉をかろうじて呑み込む。前回は自分の彼氏のナンパ現場に遭遇で、今回は密かに自分に好意を寄せる後輩と放課後デートとか。本人はデートだとは思ってないみたいだが、普通に辛い。俺なら辛い。
汐原さんは鳳の言葉に重ねるようにして謝罪し、申し訳なさそうに眉を下げる。寧ろ汐原さんは巻き込まれたようにしか見えない。俺が軽率に誘ったのも悪かったかもしれないが、同情せずにはいられなかった。
取り敢えず、このチケットをそのまま返してしまうのは逆に汐原さんをもっと困らせるような気がして、大人しく受け取ることにする。汐原さんの言うとおり、一度杏ちゃんを誘って断られたら深司にでもやればいい。
「そうなんですね。じゃあやっぱり杏ちゃんを誘ってみることにします。」
「うん、そうして。……あぁそうだな、上手くいったらサバイバル合宿の時にでも教えてね。」
「え?!」
声が裏返る俺に、嘘、冗談、と楽し気に笑う汐原さん。
どうしてこの人、俺が杏ちゃんが好きだって知って……。そこで漸く、最初からこの人がお詫びとしてこのチケットを差し出してきたのではなく、俺への気遣いだったのだと気づく。
顔が熱い。自分の思い人を知られていることも、その気遣いに気づかず気を利かせてくれた本人に声をかけたことも。結局俺がしたことと言えば、鳳に嫉妬させただけの余計なことで。
「~~~っ!本当にありがとうございました!失礼します!リズムを上げるぜ!!」
湧き上がる羞恥に耐え切れなくなって、自転車に跨り猛スピードでストリートテニスのコートを目指す。そんな俺には、鳳の悲しそうな表情は目に入らなかった。