Target5:他校男子テニス部
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再度和やかな空気を取り戻したあたし達は歩みを再開する。アイスクリーム片手に今度はどこに行こうか、なんて話していてもお互いにそろそろ日が暮れることに気が付いていて、どちらともなく最寄りの駅へ向かっていた。
「あれ、汐原さんじゃないですか!」
背後から聞こえた自分の名前に振り返る。一拍おいて、隣のちょたも振り返った。
その視線の先には、自転車を傍らに添えた神尾の姿。屋外テニスコートに向かう所なのだろうか、背中にはラケットバッグが背負われていた。
「こんにちは。これからテニス?」
「っす!汐原さんはどうしてここに?」
隣からちょたの視線を感じるが、それが意味するところまでは流石に分からない。けれど、自分の連れが自分の知らない人と長話をするのを聞いているのは退屈だろう。早く切り上げろという訴えかもしれない。ちょたに限ってそんな事は言わないだろうけど。
「今日は部活が休みだから、後輩と親交を深めてた。」
そう言いながら、ちょたの腕に自分の腕を絡めて彼の肩に頭を寄せる。仲良しなんだ、と自慢気に頬を上げると神尾も笑った。
それから自分の鞄の中身を思い出して、丁度いいとばかりにそれを取り出して神尾に差し出す。
「神尾、良かったらこれ、杏ちゃんと一緒に行ってきなよ。」
映画の招待券。唯ちゃんから忍足と一緒に行って来たら、と渡されたそれは現在放映中の恋愛映画だった。
一応唯ちゃんの言う通り忍足に声をかけたが、あたしはこういう恋愛映画は得意ではないし他の人を誘って行ってきなよと言ったところ普通に断られた。忍足以外に恋愛映画を好む友人は居ないし、忍足ママにプレゼントしようにも、忍足パパは忙しく映画に行く余裕は無いという。早いところ持て余していたのだ。
神尾がこういう映画を好むかは分からないが、杏ちゃんはもしかしたら好きかもしれない。女の子だし。
「え、いいんですか?」
「うん。この前迷惑かけたし、二人で行っておいでよ。」
序でとばかりに、彼女を誘う口実まで用意してやる。神尾はありがとうございます、とチケットを受け取ってからあ、と口を開いた。
「でもこれ、杏ちゃんもう見たって言ってたんですよね。」
「あー……そっか。じゃあ、他の女の子でも誘って?」
男二人では気まずいだろうと、一応の気を遣って他の女の子でも、と言ったが、神尾が杏ちゃん以外の女の子を誘う想像は出来なかった。実際に目の前で少し困ったように眉を顰める。ちょたも空気で何かしら察したのか、同情するように笑い声を零した。
「あ、じゃあ汐原さん、一緒に行きませんか?」
「え。」
「だってこれ、汐原さんのチケットですし。」
確かに他の女の子を誘えとは言ったが、これは完全に予想外だ。
唐突に神尾の中であたしは女の子にカウントされている事を知ってしまって、頬に熱が溜まる。ぽたりと手の甲を伝ったイチゴのアイスを舌先で掬うが、頬の熱は引くことは無かった。