Target5:他校男子テニス部
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忍足から先に一人で帰って欲しい旨の連絡を受けて、それに了承の意を返す。いつもより遅いから彼の教室まで行ってみようと席を立とうとした頃の話だった。
「今日は一人で帰るのね。」
「唯ちゃん一緒に帰る?」
嫌よ、と一蹴した唯ちゃんはそのまま前を向いた。もうマネージャーではない、他の部活に入部した訳でもない唯ちゃんはもう少し教室で時間を潰すようだ。
水曜日の部活が無い放課後は、いつも忍足の迎えを待ってから一緒に帰っていた。あたしが立海に呼ばれたり、唯ちゃんと遊びに行くために忍足に一人で帰ってもらった事は何度かあるが、忍足からあたし一人で帰るように言われたのは初めてだ。彼の成績から考えて、補習という事もないだろうから、単に誰かと遊びに行くんだろう。少しだけ他人から距離を取っていた彼が放課後を誰かと共にするのは珍しく、少しの嬉しさと多大な寂しさが胸中を占めた。自分は何も気にせず、他校や近場に出かけるというのに。
「……じゃあ唯ちゃん、また明日ね。」
あたしの挨拶に唯ちゃんは振り向かなかったし、返事をしてくれる事も無かった。自分の机に向いたまま、右手をひらりと揺らすことであたしの言葉に返してくれる。全く無視をする訳では無いところが彼女らしい。
あたしはそのまま教室を出て昇降口へ向かう。宍戸はあたしが忍足からの連絡を貰う前に帰ってしまったし、ジローちゃんも連れて行ったからがっくんも一緒に三人で帰ったんだろう。跡部は、と思って昇降口への道すがらA組を覗くが彼の姿は無かった。
もう帰ってしまったのか生徒会室かは分からないが、まだ生徒会室に居たとしても、一人で帰るのが寂しいからなんて理由で彼の仕事の邪魔をする気にはなれない。必然的に樺地も選択肢から失って、あと可能性があるとすれば滝と日吉、それからちょただが、二年生は教室の階も違うし、あまり上級生が顔を見せるのは嫌だろう。
最後に残った選択肢に従って、先程辿ってきた道を戻りB組の中を覗く。
「……ダメか。」
ちらほらと教室に残っている生徒は居るが、そこに滝の姿は無い。仕方ない、今日は一人で寄り道せずに帰ろう、と今度こそ大人しく階段を下りて昇降口に向かった。
階段を降りて直ぐ、進行方向に身体を向けると少し先に見慣れた背中が見える。先程選択肢から泣く泣く外した彼、綺麗な銀髪にすらりと伸びる長身。あぁ、今日はツイてる。あたしはパタパタとはしたなく音を立てて彼の背中に駆け寄って抱き着いた。
「ちょた、今帰り?一緒に帰ろ!」
「……はい!」
彼は背中に抱き着いた人物を確認するように首を捻り、それがあたしだと分かると破顔した。それから元気良く声を上げる。その言葉に満足して彼の隣に並ぶと、そのまま歩き出した。