Target4:傍観少女
name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
きょとんと唯ちゃんが目を見開く。驚きからか、彼女の目から溢れていた涙はもう目尻に溜まっている物だけとなっていた。
「跡部達を奪われてたら唯ちゃんの事、許せなかったと思う。でもまだ奪われてないから。何も今までと変わってないから。あたしは唯ちゃんの事友達だと思ってるよ。」
「……アンタ、馬鹿なんじゃないの?」
きっと唯ちゃんも同じなんだと思う。あたしと同じように一人でこの世界に来た、異世界人なんだろう。彼女の言葉から推測するしか出来ないが、あたしがここに来る一年以上も前から、彼女は彼等を手に入れる為に動いていたらしい。彼女はテニス部以外の友達は多いし、コミュニケーション能力も素晴らしい。きっと本気で最初から真っ当に彼等と関わっていたら、今ここで泣いているのはあたしだったような気がしてならないのだ。だから恨む気にはなれない。
「馬鹿だって言われたの、地味に初めてなんだよね。」
「……また景吾達を奪う為に画策するかもしれないわよ。」
「いいよ。そん時は今度こそ全力で喧嘩して、仲直りしよ。」
あたしは彼女と違って、最初から跡部達の心が欲しかった訳じゃない。最初はそう、彼等と話せるだけで、それだけで良かったのだ。彼等と会えると本気で思っていた訳でもないし。それを考えると彼女の周到さに気づかなかったのはあたしの落ち度だ。
今回は偶々唯ちゃんが早めに見切りを付けてネタバラシしてくれたから良かったものの、テニス部を追い出された後にあたしの預かり知らぬ所で跡部達を奪われていたら。そう考えたらゾッとした。今まで彼等に不用意に近づく子達がいなかったから、自分の立場に胡座をかいていたのかもしれない。
あたしは彼女が忍足に好意を抱いていた事に気がついていたのに。実際は忍足だけを欲していたのではなかったけれど。
「馬鹿ね。……汐原、アンタ今結構危ないわよ。」
唯ちゃんが立ち上がりパタパタと制服の裾を叩く。今までのように無邪気な
「準レギュラーに不信感を持たれて、それでいて女子と仲が良い訳でもない。しかも目立つ所で景吾達とキスしたりもしてる。……虐められても文句言えないわよ。」
「……確かに。」
相変わらず彼女の言う事は正論だ。けれど正直な所、あたしは彼等以外はどうでもいい。女友達も出来れば確かに嬉しいが、無理して作ろうとも思っていない。あたしに女友達がいない事で彼等に不利益が生じない限りは今まで通りに過ごすつもりだ。
それをありのまま唯ちゃんに宣言すると、呆れたように溜息を吐いて彼女はロッカーを閉じた。あたしより先に着替え終わった唯ちゃんは、一度出て行き少しして直ぐに戻って来た。その他には救急箱が抱えられている。
「景吾達の事は諦めないし、叩いた事も謝らない。……それでもアンタが私を友達だと言うなら好きにすれば良いわ。」
今度はあたしがきょとんと目を見開く番だ。そんなあたしに救急箱を押し付けて彼女は部室を出て行った。