Target4:傍観少女
name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「日吉!」
「……っ、すみません。」
ついつい語気を強めて彼を呼ぶと、正気に戻ったように手を離した。解放された手首を擦りながら、足元に落ちたタオルを拾う。洗濯をしなければ。元々使用済みなのだから、どのみちなのだけど。
「日吉はあたしに帰って欲しくないの?」
そもそも、彼はあたしが世界の壁を越えて来たというのを信じているのだろうか。そんな素朴な疑問から出た質問だった。先程の言葉とは違い、彼の答えを予測する事もこう答えて欲しいという希望も無い。ただ少し、日吉の態度に希望を持ってしまったが故の、質問だった。
「貴女の言っている事が嘘か本当かなんて、どうでもいいです。」
「うん。」
「でも異世界人には興味があります。」
此方に来てすぐの頃も、日吉は同じ事を言っていた。あたしの事を信じるとか信じないとかどうでもいい、と。ただ、異世界人であるあたしに興味がある、と。日吉の言葉はブレない。あれからもう三ヶ月も経っているのに、日吉のあたしに対する評価は変わっていないようだ。
それに安心感を抱くが、同時に寂しさもあった。
「……俺が満足するまで帰ってもらっちゃ困るんですよ。」
驚きで目を見開く。彼の言葉は遠回しではあるが、確かにあたしを引き止める物で。元々帰るという選択肢を選ぶつもりは無かったが、あたしの選んだ選択を初めて肯定された気がして、喜色で心が浮き立つ。ふふふと緩んだ口角を隠さず笑い声を上げた。
「素直じゃないね、日吉は。」
それにムカついたのか、日吉はあたしの頬を指先で掴む。むにーっと左右に軽く引っ張られた。
「貴女は黙って俺達の側に居ればいいんですよ。……琹さん。」
「ふぇ?!」
頬を抓られている所為で呂律の回らない声を上げたあたしに対して、日吉はぴっと勢いをつけて手を離した。まるで下らない事で落ち込むな、と言われているようで。もう一度自由になった口元が笑い声を溢した。あぁ、本当に。
「日吉は素直じゃないなぁ!」
あははと大口を開けて笑うあたしに、日吉は目を細める。じとりと睨むような視線だったけれど、不快感は全く無かった。逆に広がるのは笑い過ぎから流れる涙だ。心も晴れ晴れとしている。
「貴女は単純ですね。」
「そうですね!」
呆れたような日吉の言葉に返した言葉も弾んでいた。