Target4:傍観少女
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跡部と、少しして樺地も立ち去った事を確認して、男子二人に絡めた腕を解く。巻き込んでしまって申し訳ない、と頬を掻いた。
「あー……、えと、ごめんね。」
「別にイイっすよ。汐原さんでしたっけ?」
桃城が玉林の人にラケットを返しながら快活に笑う。どうやら彼はあたしの事を覚えていたようだった。
「うん、合ってるよ。というか、あたしの事覚えてるんだから跡部の事もちゃんと覚えてたでしょう。」
「だって跡部さんは忘れてたじゃないっすか!」
どんな負けず嫌いだよ、とハハハと乾いた声を漏らす。けれど、今は跡部の肩を持つ気になれず、そのまま流して神尾に視線を向けた。
「神尾も……あと杏ちゃんもごめんね。跡部が迷惑をかけました。」
頭を下げると神尾に駆け寄って来たのか桃城に駆け寄って来たのかは分からないが、コート内に入っていた杏ちゃんと神尾が顔を合わせて、それから慌てたように声を上げた。
「あたしは全然!それに貴女が謝る事じゃ無いし……!」
「俺も全然!」
顔の前で両手を振る杏ちゃんは確かに可愛い。跡部が声をかけたくなる理由も分かる。だけど、あたしが欲しいと言っておきながら杏ちゃんに声をかける跡部が許せなかった。そう、許せなかったのだ。
悔しいと悲しいと、確かにそんな事も思っていたが、それ以上に女の子に触れる跡部に怒りを覚えた。彼はあたしのなのに、と。
「氷帝学園三年、汐原琹。あとは、えーっと、男子テニス部のマネージャーやってるから神尾とはまた何処かで会うかもね。」
頭を上げて自己紹介をする事で、八つ当たりしそうになる衝動を抑え込んだ。にこにこと表情を作っておかないとふとした瞬間に杏ちゃんを傷つけてしまいそうだった。あたしが名前を呼んだからだろうか、神尾と杏ちゃんは自己紹介をしない。そこで会話が途切れてしまった。何か話題を、ときょろきょろと辺りを見回して唯ちゃんが視界に入る。そうだ、彼女なら。
「唯ちゃん!」
「……え?何?」
あたしが強めに呼ぶと、ハッとして唯ちゃんが駆け寄ってくる。その手に握られていたのはコーンだけになったアイスだ。溶けたアイスが指を伝っている。ベタベタしそうだ。
「桃城も初めましてだよね、彼女。錫木唯ちゃん。氷帝の新しいマネージャーだよ。」
「え、えと、宜しくね?桃城くんと神尾くん、でいいのかな?」
唯ちゃんはそのベタつく手に気づいているのかいないのか、何処か戸惑いを含んだ声色で軽く挨拶をする。こんな唯ちゃんは珍しい。いつも予期せぬことが起こっても、あらあら大変ねとでも言いたげにするすると物事をやり遂げてしまうのに。それに、彼女のうろうろと彷徨う視線は杏ちゃんを捉えていない。さっきまで穴が空く程見つめていたのに。そんな些細な事が気になるくらい、今日の唯ちゃんは不自然だ。