Target4:傍観少女
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ザワザワと周りが騒がしくなる。何やら事態が動いたらしいが、世界をシャットダウンしているあたしには何も分からない。
「あれ、アンタ……。」
小さな声が耳に入ってきたかと思えば、次いでオオオー!とその場が湧き上がった。釣られて瞼を持ち上げると、コートに入る跡部、樺地、桃城、そして神尾の姿が目をつく。普段ならこんな試合一瞬たりとも見逃さないとばかりに食いつくが、今回は見ていられないと視線を逸らした。早くここから立ち去りたい。
「……唯ちゃん、他の所に行こうよ。」
そう言いながらも座り込んでいるのは自分の方だ。立ち上がる気力も無い。他の所に行こうと言いながら、どこにも行く気が無いのはあたしの方だった。けれど唯ちゃんからの反応も無い。どうかしたの、とコートから逸らした視線を唯ちゃんの方へ持っていくと彼女もまた、何かに衝撃を受けたように目を見開いていた。呆然と、有り得ないとでも言いたげに杏ちゃんの方を凝視している。彼女がそんな反応を見せるのは少し意外だった。
「今日は負けておいてやるよ。キサマ名前は?」
「青学二年、桃城武。ヨロシク!そういうアンタは?」
「氷帝学園三年、跡部景吾。」
パコーンと響いていたショット音が止み、代わりに跡部と桃城の声が聞こえる。先日の合同合宿でお互い顔見知りの筈なのに、一々そんな会話をしているのは挑発のつもりなのだろうか。桃城の方は本当に覚えていなかった可能性もあるが。
ざり、ざり、と少しずつ跡部と樺地が近づいてくる。流石に何の壁も無い今、彼等があたしに気づいていないというには無理があった。一体何処から気づいていたのだろう。初めからだったら。
「待てよっ、不動峰中二年、神尾だーっ!!」
「てめぇにゃ聞いてねぇだろ。」
跡部は階段から登ったすぐそこにへたり込んでいるあたしのすぐ横に立って、神尾の名乗りを一蹴する。嘘吐き。次に会った時だってちゃんと覚えている癖に。
「……行くぞ、琹。樺地。」
「ウス。……琹さん、行きましょう。」
樺地が強引にあたしの腕を引いて立たせる。その腕をあたしは振り払った。そのままコート内に走り、神尾と桃城の腕に自分の腕を絡める。驚く二人を他所に、大きく口を開いた。
「あたしは今から二人とデートだから!帰るならお二人でどーぞ!!」
ばくりばくりと心臓が嫌な音を立てる。跡部の眉間に皺が寄った。良かった、ここで無関心な対応をされたら本当にどうしていいか分からなかった、と密かに胸を撫で下ろす。先程よりは怒りも治っていた。けれど素直に跡部に従う程、あたしの心は寛容では無くて。
跡部がチッと舌を鳴らして立ち去った後も、少しだけ樺地は此方を見て立ち尽くしていた。