Target4:傍観少女
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「琹ちゃん!今日暇なら遊びに行かない?」
そう言った唯ちゃんに乗って、久々に女の子だけでの放課後を楽しむべく町に繰り出したのが数時間前。そして今、二人で並んでアイスを食べながら歩いていた。
おいしいね、そうだね、と既に忘れそうになっていた程久々のいかにも女の子らしい放課後の過ごし方に、頬も緩みっ放しだ。彼女もそうなのか、隣の唯ちゃんも舌先でほんのりピンクのイチゴ味のアイスを堪能しながら笑っている。
「唯ちゃん、次はどこに……。」
「何よあんたたち!離して!」
行こうか、と口にした言葉は遮られた。女の子の声。どうやら上の方から聞こえた声に顔をそちらに向けるが、視界に入るのは木々だけで何があるのかは分からない。あたし達が居る少し先に階段があるようだった。
「これってもしかして……。琹ちゃん、行ってみよう!」
ふいに唯ちゃんが小さく口にする。そのすぐ後にあたしの手を引いて走り出した。
階段の前に着いた時には既に息が上がっていたあたしを構う暇も無く、彼女は階段を駆け上がって行く。思わずマジか、と口をついた。
手を引かれている以上あたしも付いていくしかない。途切れる息を無理やり吸い込んで、そこそこ段数のある階段を駆け上がる。
今更ながらこの階段、見覚えがある、気がする。何処で、なんて実際に登るのが初めてなのだから、作品として読んだとしか有り得ない。ならばここは……。
「ストリート、テニス……。」
目的地に着いた時、流石に唯ちゃんも肩を弾ませていた。彼女も無意識なのだろう、引いていたあたしの手を離し、呆然と目の前の景色を見ている。
目の前には、黒い学ランとフード付きベストの男が二人。後ろ姿でも分かる。桃城と神尾。そして更にその先には。
「弱者の溜まり場ってか。」
見慣れた水色のユニフォーム。そしてそれを身に纏っているのは、そちらもよく見慣れた顔の、跡部景吾。思い出した、この話は……!
跡部の言葉に激昂した杏ちゃんが、手を振りかぶる。跡部はいとも簡単にそれを受け止めた。
やめて、この続きなんて聞きたくない。あたしは誰にアピールするでも無く嫌々と首を振る。それでもそれは意味を成さなかった。
「気が強ぇトコもカワイーじゃねぇの。」
ぼたりとあたしの手から溶けかけのアイスクリームが落ちる。一拍遅れてあたしの身体もずり落ちた。
聞きたくなかった、跡部の台詞。
見たくなかった、女の子に触れる跡部なんて。
あたしと唯ちゃんの姿は桃城と神尾の陰に隠れて見えないのか、誰も反応を示さない。そんなこと御構い無しに耳を塞ぎ、視線を地面に落として、これ以上何も見ないように目を閉じた。
どうして。跡部はあたしが欲しいんじゃないの。どうして、どうして。
怒りと戸惑いと悲しみと悔しさと。その全部がぐちゃぐちゃに混ざり合って気持ちが悪い。
知りたくなかった、こんなに嫉妬深い自分なんて。