Target4:傍観少女
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汐原と先に制服に着替えて、部室を出た。侑士を待つという汐原を置いて一人で帰路に着く。今日は寄る所がある。
ショッピングモール内のスポーツ店。ウォータージャグとタオルを探す為。汐原を
汐原にレギュラーの分だけを用意させて、私が準レギュラーの方に付きっ切りになればいい。それだけで準レギュラーからの不信感を煽れる。そしてそれは、レギュラーと準レギュラーの両方を経験する若によって加速する筈。けれど出来るなら、平部員の方にも媚を売っておきたかった。
「……これはちょっと無理かも。」
普段入らないスポーツ店に入り、一つ一つ棚を確認しながら進んで行った先にウォータージャグを見つける。その棚に表示された値札を見て、自身のお小遣いの残高を計算するが、どう頑張っても用意出来そうになかった。
「私が天涯孤独系のトリップ主人公だったら出来たのに。」
はぁ、と一つ溜息をついて、今度は同じショッピングモール内にある雑貨店に足を向けた。
私は確かにトリップ主人公だ。だが、天涯孤独では無い。
"錫木唯"という人物は以前からこの世界の住人だった。両親も健在だ。以前から存在していた錫木唯の肉体に私の精神が入り込んだ、精神だけのトリップ。つまり、戸籍からボロが出ることも無いし、生活にも問題はない。
けれど両親がいる以上、私の自由に使えるお金はお小遣いとして渡される微々たる物だけで、ウォータージャグを複数個買う事は出来なかった。きっと生活費が無限に湧いてくる、肉体ごとトリップしてくる主人公なら出来ていたのに。
「仕方ない。せめてタオルだけでも。」
タオルくらいなら三枚千円とかで販売されているし、私のお小遣いでも用意出来るかも、と脳内で計算する。あぁ、だめだ。三枚千円のタオルでも平部員全員分揃えるのに四、五万は飛ぶ。洗い替えを計算すると更に倍か。そんなの普通の中学生に出せるわけがない。
素直に景吾に平部員の分も用意して欲しいと言えばいいが、汐原にも伝わるだろう。そうなると私の計画が狂ってしまう。それは避けたい。
(これは素直に準レギュラーで妥協するべきか。)
琹ちゃんってレギュラーを贔屓してるよねって言いたかったのに。
「……あーあ、中々上手くいかない。」
また計画を練り直さないと。
次の休みには汐原を誘って出掛けてみようかな。無邪気な振りして、無害な振りをして。私に裏切られたと知った時、アイツはどんな顔をするんだろうか。
想像したら笑いが止まらなくなるかと思ったのに、何故だか胸が痛かった。