Target4:傍観少女
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汐原とお昼を共に、というのは前々から考えていた事だった。マネージャーになりたい旨をそれとなく伝える為。それに侑士と岳人が付いてきたのはツイていた。自然にテニス部との関わりが出来る。うん、ラッキー。
「琹ちゃん一人で二百人?だっけ?サポートするの大変でしょ?だから私もお手伝い出来ないかなって!琹ちゃんと一緒なら私も楽しいし!」
あくまでも汐原の事が心配だという体を崩さず、マネージャーがしたいとアピールする。そうあくまでもサポートしたいのは汐原であって、テニス部では無い、と。
それが通じたのか、侑士も岳人も特に反対はしない。汐原の顔は悔しさからか歪んでいた。気分が良い。この調子なら他の部員も反対はしないだろう。ほぼ確実にマネージャーになれる。あとは、そう汐原から彼等を引き剥がしていけばいい。
「琹ちゃん、榊先生と跡部くんによろしくね!」
「……うん。忘れずに伝えておくよ。」
いつも何故か五分程時間を潰してからコートに向かう汐原に、念押しの意味を込めて無邪気に笑う。
私の事を信じて、私の言う通りに動けば良い。そうして気づいた時には独りぼっち。あぁ、なんて愉快なんだろう。
マネージャーになったら、まずはそう、亮を貰おう。都大会が近い今、レギュラー落ちする彼なら取り入る隙がある。私のノートにはその為の情報と作戦が、たっぷりと書いてあるのだから。
「そろそろあたし行くね。」
「うん、頑張ってね!」
足掻くのを、とひっそり心中で付け足して汐原の背中を見送る。アイツの顔は時折悔しさから歪んで見せるが、私に不信感を抱いてはいないだろう。次は何をしてもらおうか。
(あぁ、そうだ。レギュラーにかまけてマネージャー業をサボってもらおう。)
少しずつ、少しずつ綻んでいけばいい。
その為に、何と言って騙そうか。
「まぁいいや。先に入部届貰って来よう。」
汐原の事は後でじっくり考えよう。付け焼き刃で人を陥れると、自分自身に返って来てしまう。いつだって夢小説の悪女はそれで身を滅ぼすのだから。だから私は失敗しない。
主人公は、私。悪女は、汐原。
「失礼します。」
職員室に入り担任から未記入の入部届を貰う。本来なら三年生のこんな時期に転校生でもないのに入部しようとする私に不信感を抱くだろうに、そんな素振りは見せず軽い雑談と共に渡された。
そう、あとはこれに書いて提出すればいい。それで私の物語は始まる。
震える指先で、記入した文字は歪んでいた。