Target4:傍観少女
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「琹、今日一緒に昼飯食おうぜ!」
「オッケー、了解。あたし購買行くから先に食べててね。」
教室に行く途中でがっくんに追いついて一緒に上がって来た。彼は隣のクラスに前側の出入り口を使って入って行く。彼の席は後ろ寄りの席だった筈だから、多分C組の後ろ側の出入り口から出入りするあたしに合わせているのだろう。久々に昼食を共にする約束をして教室に入ると、今日は唯ちゃんの方から挨拶をしてくれた。今更ながら、友達と呼べる人と席が近いのはとても気分的に楽でいい。宍戸もジローちゃんも少し離れているから、授業中にこそこそ話したりは出来なかった。
「おはよう、琹ちゃん!……昨日どうだった?」
「それね、聞いてよ!ジローちゃんが……。」
机の横に教科書が入ったままの鞄をかける。何も入っていない机に対して鞄が重いのか、少し傾いたのを椅子に座って足で押さえた。多分日吉が見ていたらいつぞやのように行儀が悪いと窘められていただろう。
そんな事より、昨日の話題を口にした途端に唯ちゃんの顔が陰ったのが気になる。話題を振ってきたのは唯ちゃんなのに、この話題を拒絶しているように見えた。
「芥川くんが、どうしたの……?」
いつもニコニコと楽しげに話す唯ちゃんの声が、低い。質問を無視する事は許さないと言うように、光を失った瞳であたしを見やる。どう見てもいつもと様子が違った。
「え、えっとジローちゃんがあの匂い好きだって……。避けられるどころか逆効果だったみたい。」
「そっか!それ付ける量が足りなかったのかも。ほら、香水臭い人って誰でも嫌だと思うでしょう?そんな感じで。」
「そ、そうだね……。今度はもう少し付けてみるよ。」
うん!と笑って前を向く唯ちゃんはいつも通りで、先程のは幻覚だったのではと思えてしまう。人知れず速度の上がっていた心臓を押さえつけて、先程机にかけた鞄から教科書やノートを取り出した。それを小分けにして机の中に入れていると、唯ちゃんが急に振り返ってくる。
「そうそう琹ちゃん、今日お昼一緒に食べない?」
「え、あたしと……?」
琹ちゃんってちゃんと言ったのに、と少し頬を膨らませる素ぶりをする唯ちゃんに、思わず何も考えずに了承しそうになる。けれど今日はもう、がっくんと約束しているのだ。ここで受けてしまって良いものか。
「あ、あのね。お誘いは嬉しいんだけど今日はもうがっくんと約束してて。」
だから明日に、と続けようとしたのに、それは彼女に遮られる。
「がっくんって、D組の向日くんの事だよね?一緒に食べようよ!」
「……がっくんに聞いてみるね。」
「うん!」
そう言って彼女は前を向いた。それを見届けて、教科書を収める作業を再開する。どうしてあたしには唯ちゃんに言われるまで、一緒に食べるという発想が無かったんだろう。その答えは、一つしかない。