Target4:傍観少女
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中庭。あたしががっくんと和解した場所。あそこなら校舎にもコートにも近いし、木陰もある。中庭にジローちゃんが居るとしたらあそこだろう。其処に居なかったら別の場所に行こう、と考えていたのは杞憂だった。
あの時がっくんがしたように木陰を覗き込む。あたしの影がジローちゃんの顔にかかった。すやすやと寝息を立てる彼を起こすのは、毎度ながら忍びない気持ちになる。それでも、樺地と同じく彼にもテニスをして欲しいから。
「ジローちゃん、起きて。」
横向きで寝ている彼の背中側に膝をついて、ゆさゆさと肩を揺らす。彼は一つ寝返りを打ってからゆったりと瞼を上げた。
「うまそー……。」
ぼーっと焦点の合わない目をあたしに向けて、少し前に倒した身体を支える為に地面に着いていたあたしの腕を掴む。寝起きとは思えない程の力で引かれ、次の瞬間にはあたしの背中は地面につけられていた。驚きの声を上げるあたしの顔に影がかかる。地面に転がされたあたしの顔の横にジローちゃんが両手を着いて、覆い被さっていた。
「ジローちゃん……?」
「んー……?甘い匂いがするCー……。」
彼は寝ぼけているのか、今にも閉じそうな目を擦って、そのままあたしの首元に顔を寄せる。くんくんと匂いを嗅いで、べろんと舐めた。
(え?!舐めた?)
独特のぬめついた感触が首筋を這う。ゾクゾクと背筋を這うモノに名前は付けたくなかった。
このままではまずい。ジローちゃんに起きてもらわないと、と彼を呼ぶ為に口を開く。けれどその口から溢れたのは悲鳴に近い声だった。
「い……っ?!」
「……Aー?琹ちゃん?」
がぶりと首筋に噛み付かれた事により、悲鳴を上げる。じわりと生理的に潤む瞳がジローちゃんの目と合った。
ぱちくりと瞬きを繰り返しているあたり、どうやら覚醒してくれたらしい。良かった。取り敢えずジローちゃんに与えられた妙な感覚と甘い痛みの仕返しをどうしてくれようか。と考えて、彼の首元に腕を伸ばし、少しだけ上体を起こして抱きついた。彼がこの匂いをいい匂いだと言うなら、もう少し堪能してもらおう。
「ジローちゃん、部活始まってるよ。」
「もうちょっとだけ、このままがEー!」
えへへ、と溢す彼が笑っているのは容易に想像がついた。だからジローちゃんには是非、あたしのこの体勢は腹筋が中々に鍛えられる体勢だと気付いて欲しい。プルプルと腹筋が震えるのが分かるが、ジローちゃんの声が余りにも楽しそうだったから。もういいや。もう少しだけ、このままで。
ちゅっと頬に触れた彼の唇がリップ音を立てた。