Target5:他校男子テニス部
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コンコンと不二に指定された通り、階段を上がってすぐに見えた扉を控えめにノックする。それには何の反応も返っては来なかったが、薄々勘づいているこの部屋の用途を考えると当たり前だろう。カチャリと何故かできるだけ音を立てないように扉を開いた。
「お邪魔しまーす……。」
持ち主の居ない部屋に心臓が大きく跳ねる。緊張か、怯えか。自分では分からない。
綺麗に整頓された部屋の壁に貼られた風景のポスター、コルクボードには数枚の写真。何より目を引くサボテンの植木鉢。やっぱりここは不二の部屋だ。
あたしはどこに腰掛けるか迷って、結局床に座った。そのままぼふんと不二のベッドに顔を埋める。どう考えても無礼極まりないが、もういい。あたしの行動は非常識だが、それ以上に不二の行動も非常識だ。それ程仲が良い訳でもない女の子を部屋に呼ぶのも、自宅に呼ぶのに事前に教えてくれないのも。
事前に確認しなかったあたしも悪いのだが、不二の行動はあたしを女の子だと思っていないような気がする。多分昌山があたしを家に呼ぶ時と似ているからだろう。お茶を入れてくれる辺りはおもてなしの心遣いを感じられるが。
「……なんか、既に疲れた。」
不二のベッドはふかふかで、顔を埋めるとお日様の香りがする。絵面だけ見ると完全に変態にしか見えないのだが、どうせ入ってくるとしたら不二だけだ。これだけ雑な扱いを受けたんだから多少は許してもらおう。
「なぁ、兄貴。いつまで部屋に居ればいいんだ……よ……。」
少しばかり微睡みと戦っていると、ノックも無しにドアが開き、その声の持ち主とばっちり目が合う。お互いに驚愕の表情を隠す事もせず、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。
短い髪にぱっちりとした目。年齢の差故か、僅かに幼さの残る顔立ち。不二と、同じ色の髪。あぁ、挨拶をしなければ、と口を開く前に裕太の頬がぼんっと音を立てそうな程一気に紅潮する。
「え、えと……あ、あの、すみませんでした!!」
大声を上げて視線を逸らす裕太に一瞬首を傾げて、次には自分の身体能力ではあり得ない程早く立ち上がり、裕太の服の裾を掴んでいた。
「待って、待って!!絶対勘違いしてる!!」
「本当、お邪魔しました!」
違う違うと声を上げるあたしに、自分の部屋に帰ろうとする裕太。けれどそれはあたしが必死に彼にしがみついている所為で、不二の部屋の入口から二、三歩距離を空けるだけに留まっていた。
「ちょ、ホントに邪魔するつもりはなかったんですって!」
「邪魔って何!!?別に不二のベッドでやましいことしようとしてた訳じゃないんだけど!!」
「だって兄貴の彼女なんじゃないんですか!!?」
「違う!!」
裕太の大きな声に釣られてあたしも徐々に声が大きくなる。服の裾を掴んでいた手も、既に裕太の腰に回っており、そのまま廊下にへたり込んで全体重で裕太を引き留めている。完全に彼氏捨てられそうになっている女の図だ。けれどここで誤解を解いておかないとややこしいことになるのは目に見えている。
結局不二が上がって来るまであたし達は混乱した頭で堂々巡りの押し問答を繰り返していた。