Target5:他校男子テニス部
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あたしがきよの手を振り払って不二に近寄ると、彼の場所からもきよが見えたのか少し眉を下げて申し訳なさそうな表情を作る。遅くなってごめんね、と口にする彼には、きよに絡まれていたように見えていたのかもしれない。半分は間違いではないけれど。
「彼はあたしの暇つぶしに付き合ってくれてただけだよ。」
「……そう。」
一度瞼を持ち上げ、何もなかったように閉じる。一瞬だけ覗いた茶色い瞳がじりじりと頭の端に焼きついた。
そもそも彼はどうしてあたしを呼び出したのだろう。里経由で連絡を寄越してまで。
直近の予定で青学と氷帝が連絡を取り合うとすれば、サバイバル合宿くらいだ。けれどそれなら顧問の先生同士でやり取りするだろうし、選手間での伝達があるなら手塚と跡部だろう。あたしと不二という組み合わせは不自然だ。
「それで不二、今日はどこに行くの?」
デートという訳ではないけれど、何となしに口にした言葉は何処と無くデートに浮かれる女の子のようで一人で顔を顰める。そういうつもりで言ったのではない。
「あぁ、それなら。……ここだよ。」
そう言いながら足を止めた不二の指先を目で追う。歩いてきた場所は住宅街。勿論彼の人差し指の先に聳える建物がアミューズメントパークやショッピングモールである筈もなく、お洒落な一軒家だ。表札には、不二の文字。いや、これが手塚とかだったらそれはそれで困るのだけど。
「待って、不二。ここって……。」
「ボクの家、だね。」
不二はインターホンも押さず、慣れた手つきで玄関のドアを開ける。自宅なのだから当たり前だろう。けれど、あたしは彼の自宅に呼ばれる程仲が良い訳ではなく、寧ろ合宿で少し話しただけの、顔見知りがいいとこの女だ。加えて、まさか自宅に呼ばれると思わなかった為に手土産も持っていない。あまりにも非常識だ。あたしも、この男も。家に呼ぶなら事前に言っておけ、と立ち尽くすあたしに不二は振り返る。ドアを開けたまま扉を押さえ、左手で中に入るように促した。
「……あぁ、もう。……お邪魔します。」
「どうぞ。」
本当は今すぐ駅に戻ってケーキの一つでも買って来たいところだが、一人でここまで戻って来られる自信は無い。一つ溜息を溢すに留めて、不二宅の敷居を跨いだ。
目の前に広がるフローリングは綺麗に磨かれていて日当たりも良く、キラキラと太陽光を反射している。少しばかりの眩しさに目を細めた。
「階段を上がってすぐの部屋で待っていて。お茶を淹れて上がるから。」
「……お構いなく。」
あたしの形式的な返しに不二はクスッと空気を多分に含んだ笑みを返し、キッチンだろうか、宣言通りにお茶の用意の為に消えて行った。