Target4:傍観少女
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パタンとノートを閉じた。このノートには私の前の世界での情報と、この世界に来てからの情報が書いてある。例えば人物の情報に限って言えば、誕生日や家族構成、身長体重誕生日。それらが前の世界の情報。そして、成績や友好関係、先生からの印象。それらがここに来てからの情報。私の贔屓目や記憶力によって、人物毎に大分差があるが、少なくとも汐原よりは彼等の事を理解している。
「それにしても、見られなくて良かった。」
今朝は急に後ろから声をかけられて、しかもノートの話題に触れられて焦った。何とか不信感を抱かせる事無く誤魔化せたが、今後これがバレてしまえば汐原を利用する事が難しくなってしまう。このノートには夢小説で得た知識もメモしてあるのだから。気をつけないと。
汐原は私があげた香水を使っただろうか。アイツが私の言う事を大人しく聞けば、汐原が気がつかない内にミーハーな女を作り上げる事ができる。その第一歩が香水だ。
そう、香水を使っている女はいつも悪女だった。嫌われる要素。案の定汐原は何の疑いも無く、他校との合同練習で使ってみる、と。あぁ、何て馬鹿なんだろう。あの言葉には笑いを堪えるのが精一杯だった。
ぼんやりと中庭を眺めていると、氷帝のユニフォームを身に纏った汐原の姿が目に入る。近くに金色の頭があるから、慈郎を起こしにでも来たんだろう。
「……えっ。」
「何?唯どうかした?」
「え?!あぁ、ううん。なんでもない!」
小さく上げた声に近くに居た友達が近寄ってくる。それを慌てて制した。
どうして、汐原は慈郎に押し倒されているの。ギリっと奥歯を噛みしめる。
今日の放課後試してみると言っておいて、香水を使わなかったのかもしれない。そうでなければ、慈郎があんな事をする訳が無い。
どうして。私はこの世界に来てから一年間、少しずつ準備をして来た。自分の立場を確認して、テニス部に不信感を抱かれないように少しずつ。そして傍観を貫いてきた。
会話をするのは日直の時や先生に伝言を頼まれた時の事務連絡だけ。ミーハーだと取られない程度にアピールをして、マネージャーに誘われるその時を待っていた。そしてマネージャーになってしまえば、私の独壇場なのに!
私が彼等の唯一になる為に、汐原が必要なのは分かっている。分かっているけれど、悔しかった。
(そこは私の居場所なの。)
汐原はただ仮初めに過ぎない。そう。私こそが、本当の。
だって私は錫木"唯"なのだから。彼等の唯一の存在になるのは、私しか有り得ない。
そうなる為に、都大会までにマネージャーにならなければ。