Target4:傍観少女
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レギュラー陣が全員コートに向かった事を確認して部室に入る。着替える為だ。彼等がアップをしている間に着替えて、序でに軽く部室を掃除するのがあたしの日課だった。
カタン、とロッカーの扉を閉める。それからあっ、と声を漏らしもう一度扉を開けた。
先程投げ入れたスクールバッグからライムグリーンのラッピングバッグに入った小箱を取り出す。勿論中身は唯ちゃんから貰った香水だ。言われた通り早速試してみようと香水のノズルに人差し指をかける。
(でも、何処に付けたらいいんだろ……?)
正直今迄香水と無縁の生活を送ってきた身としては、無知もいいところでマナーも何も分かったものではない。取り敢えず手に持っていた小瓶を、一度ロッカーに戻し、鞄の中からスマホを取り出して検索欄に文字を入力する。
『香水 付け方 女性』で検索。時間もないから、適当に検索結果の一番上に指先を動かした。
「"ふわっと香らせたいならウエストか膝裏"か。」
ウエストか膝裏。膝裏なら自分自身にはあまり影響が無いかもしれない。今度こそとスマホを香水の小瓶に持ち替え、両方の膝裏にワンプッシュした。ふわりと甘い香りが広がる。こんな感じでいいのかな。
先程スマホに表示されていた時間から考えると、今日は部室の掃除をしている時間は無い。仕方なくそのままコートへと飛び出した。
「あー……今日は多いな……。頑張ろ。」
コートに入って一瞬、転がるボールの多さに遠い目をする。球拾い、今日のは大変そうだ。
取り敢えず球拾いをする平部員に加わる前に、ベンチに水筒とタオルを置きに行く。ベンチの近くに居た樺地に丁度いいとばかりに声をかけた。
「樺地。もしかしてジローちゃん探しに行くの?」
「ウス。」
香水に気づいてもらえるように態と大袈裟に動く。樺地のリアクションは特にいつもと変わらなかった。その事に少し寂しくもあったが、もしかしたら香水の量が少なかったのかもしれないと思い直して顔を上げる。
「代わりに探してくるから樺地は練習に戻って。」
「……琹さんでは、芥川さんは運べません。」
うん、相変わらず樺地は頑固だ。毎度の事ながら彼はあたしの申し出を一度で受け取らない。けれどそれは、あたしに余計な疲労感を与えない為だと知ったから普段はそれ程強く言い寄る事はしない。けれど徐々に都大会が近づいてきている今、少しでも彼には練習していて欲しかった。
「大丈夫。多分ジローちゃん起きてくれるし、自分の足で歩いてもらうならあたしでもコート迄連れて行けるからさ。だから、ね?」
「……ウス。ありがとう、ございます。」
樺地は丁寧に頭を下げてコートへと戻って行った。あたしも早くジローちゃんを見つけて球拾いを手伝わないと。まずは近い所から。うん、中庭に行ってみよう。