Target4:傍観少女
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「でも琹ちゃん、ここだけの話、いじめとか大丈夫?」
ファンクラブは氷帝には無いみたいだけど、と唯ちゃんが椅子を方向転換してあたしの机に肘を付き、小声で問いかけてくる。ちらりと彼女の視線が向けられたのは、クラスメイト達だった。
「それ、跡部達にも聞かれたんだけどね。大丈夫だよ、今の所は。……ところでファンクラブって何?」
「それなら良かった。ファンクラブはね、ほら、テニス部って他校もイケメン揃いでしょ?お互いの牽制の為にファンクラブを作ってる所も有るんだって。そんで、マネージャーが嫉妬されていじめられたりとかもあるみたい。」
一瞬耳を疑う。テニス部がイケメン揃いなのは理解できる。ここはテニスの王子様の世界、どこの学校だってテニス部が中心に盛り上がっている節はあるが、だからと言って特別な権力を持っている訳ではない。氷帝へあたしが編入する際の跡部の口添えは、ストレートに言うなら金の力であって彼がテニス部である事には何も関係が無い。
なのにファンクラブ……?しかも、お互いの牽制ってどういう事だ。所謂、抜け駆け禁止とかそういうのだろうか。其処まではまぁ、理解はできる。納得するかは別問題だが。
だけど、マネージャーをいじめるという所は理解できない。ファンクラブにどんな権力があるっていうんだ。
「そ、れはちょっと関わりたくないね。」
「だよねー、怖いよね。」
そう言って肩を竦める仕草をする唯ちゃんは、もしかしたら以前そんな経験をした事があるのかもしれない。そう思ってしまったのは、彼女の瞳に涙が滲んでいたからだろうか。だが踏み込んで聞くには、あたしと彼女には距離がある。
後で跡部にこっそり聞いてみるのは、ルール違反だろうか。跡部は全校生徒の名前を覚えているくらいだ。転校生かどうかくらいは分かるかもしれない。
「……出来るだけテニス部には関わらないようにしようかな……。」
「琹ちゃん、テニス部大好きなのに?」
「え?!あ、そうじゃなくて、他校のね。」
あたしの小さな独り言を拾った事に驚愕して、声が跳ねる。青学には多分、ファンクラブは無い。もし有ったとしたら、里が何かしらの反応を見せている筈だし、何より此方に来る前の里の性格からして、ファンクラブとか害のありそうな組織があるのを分かっていてマネージャーになるとは思えなかった。
それでは、立海は。あそこは判断材料が足りない。情報を、と無意識にスマホを取り出す。チャットアプリを立ち上げて、目当てのトークルームを探す。ちらりと見えた昌山の名前を選ぼうとして、やめた。もう二度と、この名前を選ぶ事はないかもしれない。