Target4:傍観少女
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片手で椅子を引いてそこにスクールバッグを置くと、それなりに重さのあるバッグが鈍い音を立てた。いつもはそれに反応するジローちゃんも朝練が無い今日はまだ来ていない。あぁ、いや。彼は朝練が有っても殆ど参加はないけれど。それでも。遅刻しなければいいけど。
自分のシャレにならない妄想にハハッと乾いた声を漏らして、スクールバッグから教科書やノートを取り出す。筆箱だけ机の上に置いて、残りは机の中に収めた。
「よ、汐原。」
「おはよ、宍戸。」
粗方の片付けが終わると、ぽんと軽く肩を叩かれる。声に振り返ると今現在考えていた彼の幼馴染が立っていた。ラケットバッグを背負っていないところを見ると、彼は一度部室に寄って来たのだろう。彼の背後を覗き込んでもジローちゃんの姿は無い。
「ジローちゃんは?」
「寝坊。」
あ、これは確実に遅刻だな、と先程同様に乾いた声が漏れた。それに釣られたのか宍戸も乾いた声で笑いながら、頬を掻いている。宍戸のその表情も見慣れたものだ。彼がこの表情をする時は、何かを言おうか言わまいか迷っている時。催促した所で、彼の中での結論が出ているとは限らないからあたしは大人しく待つ事にする。
その内言いにくそうにあたしの名前を呼ぶか、何でもねぇと口を閉ざすかするだろう。あたしとしては、迷う前に言葉にしてくれればいいのに、と思わないでもないけれど。
視線を彷徨わせて、あーと意味のない音を漏らす。それから、キッとあたしに視線を合わせた。どうやら結論が出たらしい。
「汐原。」
「ん?」
「お前、跡部と付き合ってんのか……?」
宍戸の予想外の言葉にゆっくりと瞬きをする。彼の思考の中でどうしてそうなったのかが分からない。分からないけど、不安気な表情を浮かべる彼の求める言葉は理解できた。
「付き合ってないよ。」
「は、でも、お前、跡部とキ、スしてただろ。」
頬を染め視線を泳がせて、キス、とその単語をどもりながら口にする。それは少し狡すぎやしないか。
「宍戸ってさ、可愛いよね。」
多分あたしの顔は、困ったような表情をしているだろう。自分の思考が歪んでいる事には気がついていた。
多くの人物からの愛を欲し、それでいて氷帝の彼等以外からの好意は拒絶をする。そしてそれは、昌山と決別したあの日から、日に日に酷くなっている自覚があった。まるで、縋り付く先を探しているみたいに。
「ねぇ、宍戸。」
けれど、止める事は出来ない。ぽかりと空いてしまった胸の穴を、彼等の好意で埋めようなんて。そんな考えは、異常だ。
「宍戸もしたかったらしていいんだよ。」
キス、と口にして窄められたあたしの唇に宍戸の唇が乱暴に重ねられる。満たされたのは一瞬だけだった。