Target4:傍観少女
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「朝っぱらから見せつけるんはええんやけど、流石に此処では自重した方がええんとちゃう?」
見られとるで、といつの間にやら集まっていたギャラリーを指すのは、一緒に登校してきた忍足だった。今更ながらに、自分のした事を思い出して赤面する。自分から跡部に口付けるなんて、そんなの恥ずかしすぎるだろう。
「ハッ、男の嫉妬は醜いぜ。忍足。」
「……まぁ、それは否定せぇへんけど。俺達が自重せな、危ないんは琹ちゃんなんやで?」
琹ちゃんも気ぃつけや、と忍足はぽんぽんとあたしの頭を軽く撫でてその手でそのままあたしの手を取る。これは良いのか。そう思うのは今更だろうか。よく考えなくても、毎日のように手を繋いで登下校するのだから自重も何も無い気がする。
それに忍足と手を繋いで登下校し始めてそれなりに経つが、別にいじめられたり遠巻きにされたりも特に無い。相変わらず女の子の友達は出来ないが。
「心配しなくても大丈夫。別にいじめとかも無いよ。」
「今んとこは、やろ?」
「そうだけど。」
忍足は、ええから言うこと聞いとき、とでも言いたげにもう一度、今度は繋いでいない方の手で頭を撫でた。
「別にさ、いじめられたとしてもキミ達が居るからいいんだけどね。」
実際にいじめられた経験は無いからどこまで自分が耐えられるか分からないが、彼等が側に居て時たまこうして頭を撫でてくれるだけで、それだけでまぁ、粗方の事は乗り越えられる気がする。昌山の事は恐らく無理だが。
ふと足を踏み出すと忍足と繋がれた右手がくんっと引かれる。振り向くと彼は少し後ろに立ち止まっていた。そして、あたしの隣を歩いていた跡部も。その顔は正に燃えるように真っ赤で、それはそれは珍しい光景だ。どこにそんな照れる要素が、と考えて、じわりとこちらの頬まで熱くなる。
「琹ちゃん、それめっちゃ殺し文句やで。」
「待って、そう言う意味で言ったんじゃない、わけじゃないけど、待って、忘れて。」
かぁっと熱くなる頬を、ツカツカと近寄ってきた跡部に攫われる。無理やりに上を向かされて、跡部の瞳を見つめた。
相変わらず綺麗な瞳だなぁと半ば他人事のように思いながら瞼を下ろした。また忍足に怒られそうだ、とそう思いながらも跡部からのキスを待ってしまうのは、彼との口付けを交わす間だけ甘美な思考に酔っていられるから。
何も考えなくていいから。だから。
「跡部、早く。」
もう慣れてしまったようにおねだりを口にすると漸く待ち望んだご褒美が降ってくる。耳元で聞こえる忍足の小言は聞こえなかったフリをした。