Target3:立海大付属中男子テニス部
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「俺が一人でも帰るって言ったら、お前どうすんだ?」
「……は。」
昌山の表情は、無表情だった。コイツのこんな顔見たことが無い。
今、昌山は何て言ったの。そうだ、帰るって、一人で帰るってそう言った。
嘘だ、だって昌山はいつだってあたしの側で笑っていて、それが当たり前で。なのに、昌山はあたしより元の世界に残してきた友達や家族を優先すると言うのだ。
「……だ。」
「あ?」
「嘘だ!!」
もう外聞なんて気にしていられなかった。先生方や警備の方に見つかるかも、なんてそんな事どうでも良い。今ここで駄々を捏ねておかないと、あたしは昌山を失う事になる。そんなの、嫌だ。
「……お前は俺よりコイツらの方が大切なんだろ?」
「そんな事言ってない。あたしが帰らないって言ってるのは、アンタもここにいる事が前提なんだから。」
「でも俺も、家族は捨てられない。」
だから、帰る、と。何で分かってくれないの。今までずっと一緒だったじゃん。何で今更。
「あたしだって、家族は捨てられない。」
「だったら帰ればいいだろ。」
「あたしの家族はこっちに居るから。」
今のあたしの家族は、忍足家族であり、里だ。誰とも血は繋がっていないが、あたしの中では確かに家族だった。
互いが互いに譲れない物の主張をする。帰ると言う昌山に、帰らないと喚くあたし。どう考えても昌山が正しかった。でも、でも。あたしは彼等から、離れたくない。
昌山はヒステリックに叫ぶあたしにほとほと痺れを切らしたのか、叩き落とした手を再度あたしに伸ばして手首を掴む。振り払おうと掴まれた腕を振り回すが、一向に振り払えなかった。どうして、仁王やブンちゃんは簡単に振り払えたのに。運動部でもない昌山の腕が振り払えないなんて。
「行くぞ。」
戸惑うあたしを強引に引いて行く。嫌だと足を踏ん張っても意味は無い。ズルズルと地面に轍のような跡を残すだけで、速度を落としてはくれなかった。嫌だ、嫌だ、帰りたくない。
「昌山!嫌がる婦女子を強引に連れて行くとはたるんどる!!」
「そうっすよ!そんなに帰りたいなら一人で帰って下さいよ!」
そんな強引な昌山を呼び止めたのは、赤也と真田だった。
彼等はフェンス越しに昌山を睨みつける。止めて、そんな顔で昌山を見ないで。キミ達仲が良かったんでしょう。どうして。
「一人で帰るなんて駄目。昌山が一緒じゃなきゃ。」
どちらか一つ何て選ばない。あたしは何て強欲なんだろう。