Target3:立海大付属中男子テニス部
name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ん?あぁ、校舎内に入んのに、流石に他校の制服じゃまずいだろ。」
「え、何処に連れてくつもりなの。」
屋上、と昌山の口が溢した音を、嫌だ、と大きな声を上げることで搔き消す。今迄手を伸ばせばお互いに触れられる程だった距離を、二、三歩後退する事で広げた。そんなあたしの変化に気がついたのか、赤也の表情から不満が消える。替わりに焦りが浮かんだ。
「行かない、屋上には、行かない。」
嫌々、と頭を振るあたしが高い所を嫌がっているように見えたのか、昌山は屋上にはフェンスが付いているから問題無いだろ、とお門違いなフォローをする。そうじゃない。あたしが拒否しているのは、そうじゃない。
「屋上で、何をするつもりなの。」
そう自分で問いかけながら、答えを聞きたくないとばかりに耳を塞いだ。聞きたくない。どうせ昌山の事だ、屋上に行く目的なんて、一つしかない。
「決まってんだろ。帰るんだよ、元の世界に。」
やっぱり。耳を塞いだ指の隙間から、昌山の声が漏れ聞こえる。昌山は、もう一度七不思議を試そうとしているのだ。
「立海には、俺達が元々居た学校と同じ七不思議が有った。試せば帰れるかもしれないだろ。」
だから行くぞ、と空けた距離を詰めてくる。あたしの方に伸ばされた手を叩き落とした。
「嫌だ、帰らない。」
「お前なぁ、俺達は元々……!」
ここの世界の人間じゃないんだぞ、と昌山が声を荒げて、しまったとばかりに右手で口を塞ぎ真田と赤也の方へ視線を向ける。仁王が知っていたからテニス部全員が知っていると思っていたが、どうやらそういう事でもないらしい。どうして。けれどそんな事を考える余裕も無かった。
だって、あたしは。
「……帰りたくない。」
そう、帰りたくない。元の世界に、帰りたくないのだ。
そうはっきりと口にして、ハッとする。そうか、合宿の時に感じた違和感。それは、これだ。
以前は、いつか帰れるだろうと漠然とはしていたが帰る方法を探していた。何気なく日吉に振った話題も、氷帝に同じ七不思議が無いか、それが帰る方法になり得ないかを確認する為だった。
けれど、今は。今は微塵も帰りたいと思わない。あの世界に残してきた友達も、家族も、それは勿論大切だった。けれど、この世界で二ヶ月の時を過ごして、あたしの中での比重が変わってしまったのだ。あたしは元の世界に残してきた人達よりも、この世界で出会った跡部達の方が、いつの間にか大切になっていた。
だから自分でも驚く程に、昌山の提案を拒否しているのだ。だけど、昌山の口にした台詞に、ヒヤリと肝が冷えた。