Target2:転生少女
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「夕飯、一緒に食べんか?」
仁王の言葉に思わず琹に引かれる手に力が入る。ずるい、と思った。この子はまた私を置いて行くのか、と。それが琹にも伝わったんだろう。彼女ははい、ともいいえ、とも答えない。うろうろと視線を彷徨わせて、時折私の顔色を伺って。気を遣っているのは明らかだった。あぁ、もうこれじゃいけない。だから。
「……いいですよ。お風呂から上がったら琹を食堂に行かせますね。」
仁王の目を見て、ゆっくりと言い放つ。あぁ、嫉妬の色は滲んでいないだろうか。羨ましいと、言外に伝わってはいないだろうか。
どうやら杞憂であったらしい。琹が私の発言を受けて、改めて自分の言葉で了承の意を示すと仁王は大人しくその場を離れて行った。ほっと胸を撫で下ろす。良かった。いつも通りにできたみたいだ。
「大石先輩も早く入らないと風邪引いちゃいますよ。」
琹の手を振り払い大石の方へ向き直る。彼はまた少し困ったように眉を顰めた。
「里ちゃんも一緒に食べるかい?英二も居るよ。」
頬を指先で掻きながら笑う。琹への嫉妬心が一瞬にして離散する。大石の言葉が、とても嬉しかった。
青学の部員の中で、唯一私の名前を呼ぶ人。ひっそりと一番仲が良いと、思っている人。だからこそ、彼の邪魔にはなりたくない。
菊丸と一緒に夕飯を摂る予定だったのだとしたら、私は居ない方が良いのだろう。だから断ろうと、上唇を持ち上げる。けれどそれは遮られた。
「うん、いいよ。お風呂から上がったら、里を食堂に連れてくね。」
琹だった。さっきの、仁王に私がしたように勝手に予定を決める琹。不思議と腹は立たなかった。
代わりに心中を埋めるのは、喜び。彼と時間を共に出来ることが、嬉しかった。
大石は琹の言葉を聞いて尚、私の答えを待っている。断ろうと、そう思うのに。
「……はい。お風呂から上がったら、食堂で待ってますね。」
一度瞼を下ろして、持ち上げる。大石と目を合わせて、言い切った。
彼らの邪魔になるかもしれない。きっと大石のことを思うなら、断るのが正解なのだ。
けれど私は。……私は、彼と一緒に居たかった。
大石の口角が笑みを作る。困ったような笑みではなかった。
あぁ、この笑顔は初めて見るなぁ、と思うより先に自分の口元もゆるゆると緩む。大石に釣られるように私も笑みを浮かべた。