Target2:転生少女
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桜乃ちゃんと豪華な食事に舌鼓を打つ。美味しい。合宿定番なカレーかとも思ったが、流石に主催が氷帝学園なだけあって庶民的なものではないようだ。
「え、えと、美味しいですね!水羽先輩。」
ふわり、とまさに桜が綻ぶような笑みを浮かべて桜乃ちゃんが笑う。この笑顔にリョーマが絆されないのが不思議だった。
「うん、美味しいね。」
女子二人の食事はとても楽しいけれど、桜乃ちゃんの事を思うとリョーマにも声をかければ良かった、と密かに後悔する。明日はリョーマも誘ってみよう。
「ところで桜乃ちゃん。女子テニス部の方は良かったの?」
「あ、えと、女子テニス部は先輩達が合宿に行っていて、この連休は自主練習なんです。」
だから私も後でおばあちゃんに教えてもらうんです、と笑う彼女はとても可愛らしかった。こちらも釣られるように笑みを浮かべる。
「そう、頑張ってね。」
「はい!」
そうして食事を共にして、桜乃ちゃんは竜崎先生と約束があるからと先に席を立った。必然的に一人になった私は、視線を食堂内に巡らせる。誰か声をかけられそうな人は居ないかと探して、目に付いたのは橙色のジャージと並ぶ、水色のユニフォーム。琹だった。
少しだけ二人を眺めていると、食事を終えたのか柳が席を立つ。一瞬彼の伏せられた目と自分の目が合った気がして、視線を逸らして止まっていた箸を動かした。先程までと同じ食事なのに、味がしない。なんだか勿体ない気がした。
「……赤也。」
柳はそんな私を気にかけるでもなく、食堂から立ち去る前に自身の後輩を見つけたのか声をかける。彼らは私から程近い場所に居るようだ。聞き耳を立てなくても話し声がよく聞こえた。
「柳先輩、どうしたんスか?」
「後で汐原に謝っておけ。」
「えー……あれはアイツが悪いんじゃないスか。」
背中の方で聞こえる会話に、彼らの表情は見えないが切原が唇を尖らせているのは簡単に想像できる。先程の切原と琹の喧嘩の件を窘めているようだった。ここまでくると彼らは先輩後輩の関係というより、親子のようだなと一瞬思ったが、それは切原の性格がそうさせるんだろうと思い直す。あの子は琹に少し似ていた。短気なところとか、気の強いところとか。……それなのに、何処か憎めないところとか。
いつの間にか柳の他にもお説教する先輩が加わったのか、二人分だった声が増えていた。
琹も、こんな感じだった。
当たり前のように小学校、中学校と同じ学校に通っていたから校内ですれ違う事は多々あった。そんな折に見かける琹は、いつも人に囲まれていて。そしてそれはいつの間にか増えていて。羨ましい、と思っていた。
思わず、振り返る。増えていた声の主は柳生だった。反射でその瞳を隠す眼鏡。彼は口元でふっと笑った。