Target2:転生少女
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妹である琹は、昔からにこにこと愛嬌があって大人から可愛がられる子だった。無邪気で、明るくて、私とは正反対だった。
年が近いのもあって毎日のように喧嘩をする。怒られるのは毎回私。"お姉ちゃんでしょ"とお決まりの文句を何度言われたことか。
だから、嫌い。
そんな折に、唐突に琹が居なくなった。私が高校二年生の頃だったか。
いつまで経っても学校から帰ってこない琹とその同級生に、静かな街が混乱に揺らいだのを覚えている。やれ家出だの、やれ誘拐だの。挙げ句の果てには駆け落ちだの。普段テレビの液晶越しでしか聞く事がない言葉を何度も耳元で繰り返される。
気が狂いそうで、それから数十年間ぽかりと胸の真ん中に空いた穴が埋まることはなかった。
結局私の最期の時まで何かを失った心が満たされる事は無かったが、その原因は分からない。失った"何か"に心当たりは無かった。
そして以前の人生を全うして、オギャーと泣き声を上げた先には私の新しい人生が待っていた。所謂転生。前世の記憶を持ったまま。つまり、腹が立つくらい苛々する、あの子の記憶も残ったままで。もう、会うこともないのに。
またしてもぽかりと胸に空いた穴を持て余して生きる人生。半ば諦めのように時間を消費するだけの人生の中で、この世界が以前と同じ世界ではないと気がついたのは、中学進学の時だった。
今生の母親が選んだ学校、"青春学園"。
琹の部屋に並んでいたコミックスを何度か読んだことがあるから知っていた、テニスの王子様の存在。そして、その主人公の通う学校。それが青春学園であることも、知っていた。そこで漸くこの世界が元々私の生きていた世界ではなく、"漫画"の世界だと気がついたのである。
だから、というわけではないのだけど、私は男子テニス部のマネージャーを部活として選んだ。別に琹が好きだったからだとか、そんな理由ではなくて。ただ、彼らの側にいる時だけはぽかりと空いた胸の穴が埋まる気がしたから。満たされるような気がしたから。
ただそれだけで。他に理由はない。
そんな風に二年を過ごして、私は一人の男子に恋をした。大石秀一郎。彼もまたテニスの王子様の登場人物だと知ってはいたけれど。
私に差し伸べてくれる手も、困ったように笑う顔も作り物だなんて思えなくて、気がつけば恋に落ちていた。ひっそりと抱えていた恋情。それは今後も変わらない、筈だった。
合同合宿で、会う筈のない琹に再会するまでは。
「汐原琹。氷帝三年。宜しく。」
礼をした後に、自身の所属する氷帝の部員に手を振る様は、良好な人間関係を築いていることが明白で。いつだって沢山の人達に囲まれていたこの子はきっと、この世界でも人気者なんだろう。
だけど。
(……大石だけは、譲れない。)
私の大切な人だけは、渡さない。