Target1:氷帝学園男子テニス部
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「よっ!」
三人での食事を済ませて、少しばかり気まずいような心地よいような沈黙を過ごしていると、後方から声をかけられた。その声に素直に振り向くと、教室の入り口に立っている向日の姿がある。その少し後ろに忍足が控えていた。あたしの席は廊下側の一番後ろである。
「宍戸もジローも汐原さんと一緒に居りたいんは分かるけど、監督に呼ばれとったやろ。行かんでええんか?」
忍足の言葉に宍戸はしまったと顔を顰め、芥川は相変わらず眠そうに目を擦っていた。どうやら忍足と向日は監督の所へ向かっている途中に廊下から二人を見つけて声をかけたらしい。
「やっべ!」
宍戸が声を上げたのを皮切りに、走り出す。向日と芥川もそれに続いた。確か今回は来月の
忍足は宍戸達の背中に、廊下は走ったらあかんでと何とも場違いな声をかけた。そして一瞬の間を置いて、ゆるりとこちらに視線を向ける。
「あぁ、せや。おかんが今晩は汐原さんの好きなもの作りたいからリクエスト聞いとけ言うとったわ。何がええ?」
伊達眼鏡越しの優しい眼差しに、つい素直に従いそうになるが
「別におかんも俺も迷惑やなんて思ってへんから、気楽に食べたいもん言うたらええよ。」
「……じゃあ、オムライス。」
本当は忍足の言葉を無視してでも遠慮しようと思った。けれど、部活終わりの疲労感を思い出して素直に甘える選択肢を選ぶ。今度の母の日に忍足ママに何かプレゼントを送ろう。異世界人だと知らないとはいえ、他人のあたしを娘のように可愛がってくれる忍足ママの存在はとても有り難い。因みに忍足のお姉さんは既に家を出ていて、忍足パパは言わずと知れたお医者様なので、殆ど家に帰ってこないらしい。
あたしの両親不在の理由としては、一緒に住んではいるが仕事が忙しく帰ってくることが少ないと忍足の口から説明されているみたいで、忍足パパとあたしの存在しない両親を重ねたのか、同情してくれたみたいだ。
「おかんに言うとくわ。」
忍足はそう言って、大分前に見えなくなった宍戸達の背中を追いかけて行った。あたしはそれを視線だけで見送る。
ここに来てから、どれだけの人の優しさに触れたのだろう。忍足や跡部を始めとしたテニス部の面々は勿論、忍足ママや近所のおばちゃんといった物語には描かれていなかった人達。誰も彼も皆、あたしという異分子に優しい。それでも帰りたいとは思うのは、あたしにとって昌山という存在がとても大きいからに他ならない。昌山とは今のままの関係で、それに加えて忍足と親友になりたいと、それはあたしの我儘だろうか。
「あー……、疲れた……。」
休憩時間が終わるまでは、まだ少し時間が残っていた。