Target1:氷帝学園男子テニス部
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結局戸籍が無いらしいあたしは、跡部の口添えで氷帝に転入した。正直あまりいい気はしないが仕方ない。一応試験は受けたし。ほとんど解けなかったけど。
約束通り放課後は男子テニス部のマネージャーとして仕事を覚える日々。
正直、前の学校には無かった授業プログラムや経験の無いマネージャー業で頭がパンクしそうな毎日だが、今までにない程充実した時間を過ごしているように思う。疲れた身体を引き摺って帰った後に夕飯の支度をする気力がなく、忍足ママのお世話になってしまうのは申し訳ないけれど、今暫くはこのままになりそうだ。
「あー……、疲れた……。」
聞き慣れたチャイムに、外聞を気にする暇もなく机に伏せた。朝練からの授業。早起き、ハードな運動、辛い。それでも引き受けると自分から言った手前、弱音を吐くなんて事は出来なかった。
机に伏してから暫く。軽すぎる仮眠を貪るが、いつまで経っても授業開始のチャイムが鳴らない。そこで今が、昼時の長い休憩だと気がついた。今更ぐーとお腹が鳴った。我ながら現金なものである。
食堂……は混んでるだろうなぁ。お弁当は忍足ママにそこまでお世話になるのは気が引けて、自分で何とかするからと辞退した。残る選択肢は、購買でパンを買うか食べないかの二択しかない。
食べないのは放課後も部活があるから論外として、購買は。あぁ、でも今からなら休憩時間開始から少し経っているから空いてるかもしれないか。購買にしよう。
そう思って立ち上がると、目の前にとさとさと四、五個のパンが積み上げられる。
「ほらよ。」
視線を上げると宍戸の顔。さも当たり前の様な顔をしてあたしの机の前に立っていた。
「……これ、どうしたの?」
あーだの、うーだの、宍戸は言いにくそうに言葉を探して、あたしの席の前の席、持ち主が他に出掛けて空席となった席に腰を下ろした。それから漸く口を開いた。
「……汐原が、机に伏せてたからよ。疲れてんじゃないかと思って序でに買って来た。……マネージャー、慣れねぇのに頑張ってんだろ。」
「……ありがとう。」
純粋な宍戸の気遣いに素直にお礼を口にする。
パンの山から
久しぶりに誰かと食べた昼食に自然と口角が上がった。美味しい。
「宍戸。」
「……あ?」
「ありがとう。」
もう一度告げたお礼に、宍戸は別に大した事はしてねぇよ、と照れた様に頬を掻くが宍戸は忘れているのだろうか。あたしがここに来た初日、階段を踏み外したあたしを受け止めてくれたのは紛れも無い宍戸だった事を。
宍戸はいつも当たり前の様にあたしを助けてくれる。自分では何でもないような素振りで。
これは鳳も懐くだろうな。女のあたしから見ても、彼はとても格好いい。
「あー!!二人ともずるいCー!!」
漸く二人でパンを食べ始めたかと思うと、側でそんな声が上がる。寝起きなのだろう、少し
考えるまでもなく芥川だった。
「俺も一緒に食べるC!」
そう言って彼はあたしの机の横の席から椅子を拝借してお弁当の包みを開く。一瞬のうちに何とも賑やかな一角になったものである。