Target3:立海大付属中男子テニス部
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「テニスコートで待ってろって言われても。」
それなら早く言え、と暴言が口を吐く。もう少し昌山からの連絡が早ければ、真田に着いて行けたのだ。いや、それは逆に目立ち過ぎるか。どちらにせよ一人でテニスコートに向かわなければならなくなった。
「この格好でどうしろって言うの……。」
変装と言えない程、不自然な格好。百歩譲ってダボついた制服は、一年生が成長を見越して大きめの制服を着用していると取れなくもない。と信じるしかない。
兎に角、テニスコートに戻って昌山と合流しようと今まで通ってきた道を戻る為に方向転換をする。ここは多分校舎裏に当たるのだろう。少し湿気った空気と遮られた日差しがあたしの顔に影を落とした。
曲がり角で頭だけ覗かせ、人が居ない事を確認してから進む。こうしてコソコソと進むのなら、立海の制服を着ている意味も無いだろうに。
溜息を吐きながら、また建物の影から頭を覗かせ、人影が無い事を確認すると足を踏み出した。その瞬間、右肩に衝撃が走る。え、人は居なかった筈、と倒れそうになる身体を足を踏ん張って支えると、何という事はない。背後からの気配に気が付いていなかっただけだった。
どうやら進行方向にばかり意識をやって、背後の確認を怠っていたらしい。
あたしにぶつかった相手も相当急いでいたのだろう。いつぞやのあたしみたいに地面に身体を投げ出していた。
「いった……ぁ!」
そりゃ痛いだろうよ。コンクリートに身体を打ち付けたんだから。
あたしは声で女だとバレないように無言で右手を差し出す。左手で真田に借りた帽子をより深く被り直した。
帽子で遮られた視界には、あたしの身長と相まって相手の足元しか入らない。それは確かに深緑のスラックスだった。あたしが今履いている物と同じ、男子制服。ぶつかった相手は男子だったのか。それならば手を差し出すのは逆に失礼かもしれない、と差し出した右手を引っ込めようとするのより先に相手があたしの手を取る。少々意外に感じながらも、手を取られたのだから仕方ない。身体を起こすのを手伝うように腕に力を込めた。
「それ、真田副部長の帽子?」
助け起こした相手は、男子にしては高い声で謝罪もお礼も無く唐突にそう聞いてきた。流石に柳生レベルで礼儀正しくなれとは言わないが、最低限の謝罪とお礼は言えるようにしておくべきではないのか。ぶつかって来たのはそっちなのに。
「そ……っ。」
そうだけど、と口にしようとして慌てて口を塞ぐ。ただでさえ不自然な格好なのに、女子だとバレる訳にはいかない。
あたしはポケットからスマホを取り出して、メモ機能を立ち上げ、伝えたい言葉を入力する。それをそのまま相手に見せて、返事を待たずに駆け出した。
「ちょっと……!」
背後から声が掛かるが、振り向く事はしない。
それにしても、どうして"彼女"はあたしの被っている帽子が真田の物だと思ったのだろう。何となく嫌な予感がした。