Target3:立海大付属中男子テニス部
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締め付けられる胸が苦しい。文字通り物理的に、だ。あたしは先週昌山に言われた通り、立海の男子制服を身に纏って校門を潜っていた。
男子制服なのに胸があるのは違和感があるだろうと百均で包帯を買い、ぐるぐると巻いて胸を潰し、サイズの合わないダボつく制服に、立海から程近い駅のトイレで着替えた。男子にしては長いであろう髪を適当に一本に纏めたが、男子だと主張するには少々無理がある。ビクビクと不審な仕草をしている自覚があった。
「何をしている。」
特段誰に引き止められるでもなく敷地内に入れた事にホッと胸を撫で下ろしていると、背後から厳しい声が掛けられる。しまった、バレたかもしれない、とギギギと音を立てそうな程ぎこちなく振り返ると、声の主はむっと声を上げた。
「なんだ、真田か。」
「なぜ氷帝のお前がここに居る。」
「昌山に呼ばれたんだよ。ねぇ、ちょっとお願いがあるんだけど。」
ユニフォーム姿の真田は部活中なのだろう。先週と同じ水曜日だからといって、毎週幸村のお見舞いに行っている訳では無いらしい。あたしはテニスコートのすぐ近くを歩いていたようだ。
「その帽子、貸してくれない?」
「……これか?」
真田は少し考える仕草をする。まぁ、現在進行形で部活中なのだからその帽子を貸せと言われても抵抗があるだろう。あたしとしても貸してくれればいいな、程度だ。
「……いいだろう。帰るときには返してくれ。」
「え、いいんだ。ありがとう。」
暫し口を噤んだ後、真田は被っていた帽子を脱いであたしに差し出してくれる。それをお礼を口にしながら受け取って、一つに括っていた髪を解き、帽子の中に押し込むようにして被った。それでも少々あたしにはサイズが大きかったらしい。深く沈む黒い帽子のつばがあたしの視界を遮った。それに真田も気がついたらしく口を開く。
「サイズが少し大きいな。調整するか?」
「いや、大丈夫。このままでいいよ。」
「そうか。」
サイズを調整しようとあたしの頭に伸びる真田の手を、一歩下がる事で躱す。深く沈む帽子はあたしの顔を隠してくれている筈だから、こちらとしても都合が良い。だから、このままで。
それよりも早く昌山と合流したかった。幾ら顔や髪を隠しても、ダボついた制服で誤魔化すのには限界がある。立海の先生方や警備の方に見つかる前に昌山の用件を済ませて帰ってしまいたかった。
「真田、帽子ありがとう。また後でコートに寄るね。」
真田の返事を待たずにあたしは駆け出す。とりあえず
そういえばまだ柳生にハンカチを返せていなかったな、と気がついたのは、昌山からテニスコートに向かうと連絡が来た時だった。