Target3:立海大付属中男子テニス部
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立海と氷帝の違い、一言で言うなら自分のモノかそうでないかの違いだけだ。あたしは氷帝のモノだし、氷帝はあたしのモノだし。あたしは別に、所有者に乱暴に扱われようと気にする質でも無い。だから、氷帝の部員から触れられる事は拒否しない。
だけど、立海はそうではない。仁王もブンちゃんも赤也も、そして目の前の柳も。彼等が優しい事なんて、知っている。
合宿の時ブンちゃんが少々強引に医務室まで連れて行ったのだって、宍戸に乱暴に腕を引かれたあたしを庇ってだったというのも気がついていた。尤も、それに気がついたのは、合宿から帰るバスの中で隣に座った宍戸の見解を聞いたからなのだけど。
「氷帝の部員で、あたしが他の人と仲良くしてると嫌がる子がいるから。」
「……鳳か。」
そこまで知っているのか。青に変わった信号を確認して横断歩道に足を踏み出す。もうあたしからは先に走って行った部員達は確認出来なかった。
「だが、鳳が見ていない場所でも拒絶している理由は何だ?」
ちょたが見ていない場所でも拒絶している理由なんて。そもそもちょただって、あたしが氷帝の部員含む他の人と一緒に居ると悲しそうな顔をするだけで怒ったり束縛する訳でもない。立海と仲良くするくらいで、文句は言わないだろう。彼が口にするのはいつだって、あたしを第一に考えている言葉ばかりだ。
「ごめん、嘘。」
結局、適当な理由で柳をはぐらかそうなんて、あたしには荷が重かったのだ。そうか、とそれだけを言葉として発し、続きは見えない筈の視線で促される。言葉にするならそれで?といった感じだろうか。
「氷帝があたしのモノだからかな。」
「ほぅ、興味深いな。」
こう見えて物持ちは良い方なんだよね、と柳の方へ視線を向けるとぱちりと視線が合った。瞼を持ち上げられた焦げ茶色の瞳がかちり、と。
それは直ぐに塞がれてゆったりとした動作で彼が顔を寄せる。させるものか、とあたしは耳元で囁かれる前に飛び退いた。
先程散々仁王に揶揄われたのだ。同じ手には引っかからない。と、そう思っていたのに。
あたしは忘れていたのだ。まだ柳と手を繋いだままだった事を。飛び退いた所で手を引かれたままの身体が距離を取るなんて出来る訳もない。クスクスと笑い声を上げる柳は、もう顔を寄せては来なかった。その顔は何やら機嫌良さげだ。
「汐原、走るぞ。」
今度はもう、気遣いなんて微塵も無く、あたしの手を引いたままの全力疾走だった。