Target3:立海大付属中男子テニス部
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バタバタと走り出した昌山に続いて、立海の面々も走り出す。一人取り残されそうになったあたしの手を引いたのは柳だった。
「汐原、走るぞ。」
あたしの返事を待たずに、彼はその長い脚を駆使してズンズンと距離の空いた彼等を追って行く。走る、と言いながらも早歩き程度の速度に留めているのはあたしが居るからだろうか。
あたしの手を引く仕草も、以前のブンちゃんや先程の仁王のように乱暴ではない。手首を掴むのではなく、優しく手を取って誘導するように少し前を行く。計算か天然か、いや計算だろうな柳の場合。彼の行為は優し過ぎて、拒否が出来ない。
時折信号の前で足を緩めて息を整える時間をくれる。それはあたしの為と、信号に引っかからない為の時間調整を兼ねているようで、一度も信号に引っかからなかった。
「……って、柳!」
ぜぇぜぇと肩で息をしながら先を行く柳を呼び止める。彼は一瞬、視線を進行方向の先へ向け何かを確認してから足を止めた。
「すまない、汐原の体力から速度を計算したつもりだったが……。少し無理をさせたようだ。」
柳の言葉にはは、と自嘲した乾いた声が漏れる。柳の予想を上回る体力の無さだった訳だ。どうせ彼のデータを上回るのならもっと別の項目が良かった。
「それ、は大丈夫なんだけど……。」
精神的には少々傷ついたが。問題はそこではなく。
「手を……。」
「「離してほしい。」とお前は言う。」
いつぞやと同じ様に、彼はあたしの台詞を奪い取って行く。彼は疾うに分かっていたのだ。あたしが拒絶することを。それで敢えて良心に訴えかけるように優しい手つきで……あぁ、いや。これは彼が元から優しいからということにしておこう。全てが計算だと考えるのは、身勝手ながら少し悲しい。
「理由を聞いてもいいだろうか。……少々時間が押している。歩きながらになるが。」
そう言いながら、柳はあたしの返事を待たずに歩きだした。勿論手は離してもらえていない為、あたしも彼に続いて歩き出すしかない。流石に息はもう弾む程ではないが、深呼吸をすると噎せる程度には、まだ完全な復活とは言えなかった。
「お前は氷帝の部員だとどれだけ乱暴に触れられても拒否をしないと聞いた。だが、立海の部員だとどれだけ優しく触れても拒絶をする。その違いは何だ?特別立海の部員を嫌っている訳でもないのだろう?」
「……それ、誰が言ってたの。」
「丸井だ。」
マジか、と溢れたところでちょうど信号に引っかかって足を止める。彼は計算を放棄して、あたしから情報を引き出す事に専念したようだった。