Target3:立海大付属中男子テニス部
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バスに乗り込む列に並びながら背後を振り返った。少し離れた場所に、同じく帰る為にバスに乗り込む氷帝部員が見える。人数は立海と同じくらいなのに態々バスを二台に分ける程、レギュラーと準レギュラーの待遇の差を見せつけられて、氷帝の方針に口出すつもりはないがハハ、と乾いた声が漏れた。
氷帝のバスの乗り込み口付近にバインダーを持って立って、何やら書き込みながら時折顔を上げて乗り込む部員の顔を確認する。点呼を取っているようだった。
「なぁ、ジャッカル。アイツどう思う?」
俺の後ろに並んでいたブン太が話しかけてくる。ブン太は両腕を頭の後ろで組んで、いつものようにガムを膨らませた。その視線は氷帝のバスの乗り込み口に居る汐原に向けられている。
「別に、どうって程の付き合いも無かっただろ。それよりお前、荷物くらい自分で持てよ。」
たかだか二泊三日の合宿の荷物はそう重いものではない。だがそれも一人分なら、の話だ。
ブン太の荷物も待たされている俺からすれば、多少重みを感じるのは当たり前だ。特にブン太の荷物は何が入っているのか、通常より大分重い。
「アイツ、なんっか可笑しいよな。」
「無視かよ。」
いつものブン太の態度に、気持ちがっくりと肩を落とす。これ以上ブン太に何を言っても意味を成さない事は、悲しいかな長い付き合いの中で学んでしまった。俺は仕方なくブン太の話題に乗る事にする。
「可笑しいって……別に普通だろ。」
湿布を余分に貰ったりする程度、可笑しいとは思えない。どっか他に怪我をしてた可能性もあるし、他の部員が怪我をしていた可能性もある。不自然な所は特に感じなかったが、ブン太はそうでもないらしい。じっと汐原から視線を離さない。
俺も釣られて汐原にもう一度視線を向けると、ちょうど汐原が顔を上げて部員の顔を確認した。その部員と視線をかち合わせてにこりと嬉しそうに笑う。乗り込む部員は日吉だった。日吉は特に反応もせず乗り込む。特段違和感を感じる光景でもない。
「別に普通じゃねぇか?」
「いや、何つーか……。」
ブン太が適切な表現を探すように言葉を詰まらせた。少しあーだのうーだの意味を成さない音を上げて、おずおずと口を開く。
「……さっきアイツ、俺の手を振り払ったんだよ。可笑しいだろぃ?」
「……は?」
さっきというのは、多分オリエンテーションが始まる前の事だろう。汐原の手当てをするから少し遅れる、と宍戸から伝言があった。だが、ブン太の手を振り払った、というのは。
「お前なぁ、汐原だって嫌だったら手くらい振り払うだろ。」
真剣に聞いた俺が馬鹿らしい。幾らブン太が自信家だといえど、流石に自意識過剰だろう。呆れたように眉尻を下げるとだぁーっとブン太が声を上げた。
「そうじゃねぇって!アイツ宍戸の腕はどんだけ乱暴でも振り払わねぇのに俺だけ振り払ったんだって!」
「ジャッカル、丸井。後ろが支えている。早く乗れ。」
「あ、あぁ、悪いな柳。」
汐原のように乗り込み口の近くに立って点呼を取っている柳に促されて慌てて乗り込む。ブン太の話は既に頭に残ってはいなかった。