Target3:立海大付属中男子テニス部
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「ねぇ、仁王。ヒント頂戴。」
歩みを再開した仁王に続きながら言う。全く自分の甘さが嫌になる。あたしは悪くないのに。強いて言うなら、あたしに過度な期待をする仁王が悪いのに。それでもその期待に応えようとするあたしは、やっぱり少し彼等に甘いんだろう。
「……ヒント?」
「そ。流石に完璧に入れ替わられたんじゃあたしには見分けられないし。ちょっと手を抜いてくれれば、頑張って見分ける……うん。努力はする。」
絶対に見分けられる自信はないから言い切る事は出来ないけれど。
柳生の格好をしたままの仁王は少し考える素ぶりをしてニヤリ、と口角を上げた。そのままあたしの耳に唇を寄せ低く掠れた声で囁く。反射的に掌で耳を押さえて一歩距離を開けた。一気に顔が熱くなるのが分かる。囁かれた声は、柳生の声だった。
「……っ危ないですよ。」
柳生の格好をした仁王に窘められる。背後を振り返るとあと少しで通行人にぶつかるところだった。すみません、とか細い声で謝罪しながら会釈する。相手も特に気にする素ぶりも見せず会釈を返してくれた。良かった。
ほっと胸を撫で下ろして、本日二度目の恨みがましい目線を仁王に向ける。
「仁王!揶揄うのはいい加減にしてよ!」
「すまん、そんなに驚くとは思わんかったんじゃ。」
存外簡単に口にされた謝罪に、これ以上怒る気にもなれず、大きく溜息をつく事でやり過ごした。彼と一緒に居るとどうして、と幾多もの疑問が湧き上がるような行動をする。その行動全てに理由を求めてしまうのは、疲れてしまいそうだ。
きっと気まぐれで、特に考えもなく行動しているんだろう。今だって。
「分かってくれたならいいよ。……昌山待たせてるんでしょう?早く行こう。」
「……もう着いとるんじゃが。」
「え?マジで?」
呆れたように眉を潜める仁王の指先を辿ると、数メートル先に立海テニス部のレギュラー陣とその中に混ざる昌山の姿を認める。妙に浮き立つ心に従って、あたしは駆け出した。
レギュラー陣を掻き分けて、というよりは彼等が自主的にあたしを避けてくれたのだけど、昌山に抱きつく訳でもなく目の前に立った。昌山もそれを見届けて、右の掌を上げた。
「よっ、久しぶり。」
あぁ、このやり取りも久しぶりだ。一ヶ月ぶりか。その間に沢山の事があった。話したい事が沢山ある。聞きたい事も山程。頬が緩むのを感じた。
「久しぶり!」
パチン、と昌山の掌に自分の掌を合わせる。昌山の隣に立っている仁王には気づかなかった。