Target3:立海大付属中男子テニス部
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「なんじゃ、お前さん俺達を見分けられるんじゃないんか。」
あたしを腕の中に閉じ込めたまま、まるで期待外れとでも言いたげに鼻から息を吐き出す。そんなの、買い被り過ぎだ。
「見分けられる訳ないでしょ。」
「合宿で最初に声を掛けた時には気づいたんじゃろ?」
「あれは仁王が香水を付けてたから。」
そもそもあの時だって確信を持って、柳生が仁王だと思っていたわけではない。ただちょっとした違和感が、もしかしてと思わせていただけで。
「……はて、俺は香水なんかしとらんかったんじゃが。」
「え?だって、確かに香水の匂いがしたけど……。」
確かに翌朝話した時も、練習終わりに抱きしめられた時も。彼からは仄かに埃っぽい匂いがするだけであの時の香水の匂いはしなかった。あれ、でもあの匂いって確か、どこかで……。
「……あ。」
「なんじゃ?」
「あぁ、うん。とりあえず離してよ。」
ふと思い出した事に自分自身苦笑を漏らしながら、今度ははっきりと離して欲しいと主張する。やれやれと肩を竦めて仕方ないと言わんばかりの態度で漸く仁王は解放してくれた。
「それで?」
立海まで案内してくれるんだろう。仁王は先程あたしが進もうとした方向に足を向けて、あたしの言葉を促した。あたしもそんな彼に並んで先程思い出した事を口にした。
「あの時仁王からしてた匂い、榊先生のポマードの匂いと一緒だなって。」
「確かにあの時氷帝の監督に指導で呼ばれたな。」
あぁ、それで。ポマードの匂いはきつい物が多い。きっと榊先生と話した時に匂いが移ったんだろう。あの時彼から香ったのは、香水の香りではなく、ポマードの移り香だったのだ。真相が分かってしまえばどうということでもない。
「じゃあ、あたしがあの時仁王だと思ったのは本当に偶然だったね。ごめん。」
「……そうじゃな。」
お前さんが謝ることじゃなか、と言いつつ彼はあたしの頭をかき混ぜるように撫でる。ブンちゃんといい仁王といい、なんでこうも人の髪をぐちゃぐちゃにするのが好きなんだ。もぅ、と不満の色を隠す事なく仁王を見上げると、彼は足を止めてこちらを見ていた。それはなんだか少し寂しそうで。何も悪いことはしていないのに、胸中を罪悪感が埋める。彼は見分けて欲しかったのかもしれない。
でも、それがあたしにできるなんて、買い被り過ぎだ。別に観察眼が優れているわけでも、推理力に優れているわけでもないあたしに見分けろなんて。彼は自分のイリュージョンのクオリティの高さを知っていて言っているのだろうか。
あぁ、なんて無責任な。