Target3:立海大付属中男子テニス部
name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「リョーマ……?」
呼ばれた声に振り返るとリョーマは一瞬訝しげな表情をした。あぁ、またやってしまった。ジャッカルといい、ブンちゃんといい。どうにもここに来る前に呼んでいた愛称が馴染み過ぎていて口から滑り落ちてしまう。気をつけなければ。
「あ、ごめん。越前。」
「……別に、どっちでもいい。」
リョーマの言葉に甘えて、もう一度リョーマの名前を口にして彼の用件を促す。彼から声をかけてきたのだから何か用があるのだろう。だけどいつまで待っても彼は口を開かない。仕方なく此方から話題を振る事にした。
「そういえば、リョーマの飼ってる猫……、カルピンだっけ?さっき庭で見かけたよ。」
「へぇ、アンタ、カルピンの事知ってるんだ?」
「え?」
あたしの言葉を最後に二人の間に沈黙が流れる。リョーマの言葉に込められた意味を思案して、先程リョーマの名前を呼んだ時以上にしまった、と目を見開く。普通に考えて、初対面に近い人間の飼ってるペットの姿や名前なんて知らないのが当たり前だ。庭に猫がいたからといって、それがリョーマの飼い猫であるなんて分かるはずがないのだ。
「アンタ、何なの。」
リョーマから逃げ出す訳にもいかず、うろうろと視線だけを彷徨わせて言い訳を探す。誰かの所為にしていいのなら、跡部達の所為だ。彼らが何の躊躇いもなくあたしの不自然な部分を見ないふりをしてくれるから。
なんて、八つ当たりしても遅い。口は災いの元。一度口にしてしまった言葉を引っ込める事は出来ないのだから。
「まぁ、別に何でもいいケド。……水羽先輩の事は、結構感謝してるんだよね。」
それだけ、とリョーマは帽子の鍔を少し下げて目線を隠してしまう。もしかしたら照れているのかもしれない。そのまま青学の面々に合流しようとするリョーマを引き止める。
「待って。……あたし、嬉しかったんだ。」
素直に振り返ってくれる彼に本音を少しだけ、伝えてみよう。
「キミ達が大好きだから、里が大切だから。大切な人が、大好きな人達に大切にされてるって分かったから。」
恥ずかしい事を言っているな、と自覚はあった。だけど何故か、今彼に言わないといけない気がして、少々早口で言葉を続ける。
「だから、ありがとう……って他の人達にも伝えておいて。」
不二には大嫌いなお姉ちゃんだと言ったけれど。本当は、そんな事。
「アンタ素直じゃないね。」
キミには絶対言われたくない、と口にしようとしたけれど、その前に彼がひらりと左手を揺らして食堂から出て行った。
あぁ、彼がちゃんと伝えてくれればいいけど。
あたしの口角は上がっていた。