Target3:立海大付属中男子テニス部
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「ちょっと、ブンちゃん?!」
ジャッカルから貰った湿布を持っていると知っていながら、何で丸井は。
打ち付けた右腕ではなく左腕を引くのは彼の気遣いなのだろう。
「……お前、それが素?」
何のことだ、と考えて慌てて右手で口を塞ぐ。あたし、さっきも今も、彼のことを愛称で呼んだ。流石に馴れ馴れし過ぎるだろう。
「別に良いぜ、お前が呼びやすいなら。」
「……え?いいの?」
予想外に簡単に降りる許可にきょとん、とするのも許して欲しい。だって、彼との関わりはそれ程無かったのだから。
本当にジャッカルに手当てをしてもらった時に側に居たくらいで、後は殆ど目が合うことも無かった。なのに、どうして。
食堂の入り口を通り過ぎて、少し奥の医務室の扉の前に立つ。まだ彼に腕を掴まれている事に気がついて、少し乱雑に彼の手を振り払った。
え、と驚いたような声をブンちゃんが上げる。少しだけ良心が痛んだ。
「……あ、ほら、手当てしてくれるんでしょ?早く。」
誤魔化すように扉を開けて中に入る。昨日そうしたように、今回も椅子に座ってブンちゃんを待った。ただ、今回は彼が湿布を用意しなくてもあたしが持っている。彼が中に入ってくるのを待つだけで良かった。
「汐原。」
「ん?」
「……お前、肩に湿布貼るのに、服着たまんまじゃ出来ねぇだろぃ。」
あぁ、確かに。あたしが着ているのは氷帝のユニフォーム。ラインの本数に違いはあれど、他の部員達が身に纏っているものと変わりはない。今はジャージを羽織っていないから半袖だが、肩までたくし上げたとしても肩に湿布を貼ることは出来ないだろう。ならば一度脱ぐしかないか、とユニフォームの端を腕をクロスした状態で摘む。そのまま肘を折り、肩を上げようとしたあたしをブンちゃんが焦ったように止めた。
「は?!お前なぁ、俺は男なんだぞ?!」
「……?だから?」
別に中にキャミソールを着ているから、ユニフォームを脱いだところで直ぐに下着というわけではない。手当てが目的なのだし、恥ずかしがることは無いと思うのだけど。
あたしの行動にブンちゃんは呆れたように肩を落とした。それでも一瞬で顔を上げ、あたしが手渡した少々温い湿布のフィルムを剥がす。それを優しい手つきで右肩に貼ってくれた。
「ありがとう。利き手の方だったから多分自分じゃ貼れなかったと思う。」
「……宍戸があんな顔をする理由も分かる気がするわ。」
ブンちゃんに背を向けて、脱いだユニフォームに腕を通しながら彼にお礼を言うと、彼は湿布のフィルムをゴミ箱に捨てながらぼそりと言う。あんな顔って、と聞き返そうと背後を振り返ると、いつの間にか此方に寄って来ていた彼に頭をわしゃわしゃとかき混ぜられる。
「ちょっと!」
ボサボサになった髪を指で梳きながら文句を言うと、彼は笑い声を上げた。