Target3:立海大付属中男子テニス部
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「絶対、受け止めてやるからよ。」
宍戸のその言葉に思ったのは、だろうな、だった。そもそもあたしを受け止めてくれた時が彼との初めましてだったのだ。宍戸が受け止めてくれない訳がない。
「……宍戸、怪我しない?」
腰とか、足とか。軽い訳ではない体重のあたしを受け止めて負傷しない保証はない。それならまだ、あたしが一人で飛び降りる方が宍戸を巻き込まないだけマシなのではと視線を下げてびくりと肩を跳ねさせた。学習しない。
「そんな柔じゃねぇよ。ほら。」
両腕を伸ばしてあたしに向ける。この胸に飛び込んで来いと言わんばかりの仕草。大丈夫、大丈夫。宍戸なら必ず受け止めてくれる。
そう心内で繰り返しても、無意識に身体は木の幹の方へ寄ってしまう。カチカチと噛み合わない奥歯を噛み締める。そのまま目を喰いしばるように強く閉じた。
後はこのまま、下に飛び降りればいい。
「絶対、受け止めてやるよ。」
自由にならない視界の中、耳を掠めたその言葉を皮切りに、あたしは身体を投げ出した。
一瞬の浮遊感の後、どさりと鈍い音を立てる。ゆるりと瞼を持ち上げると見慣れたポニーテールが視界に入った。ばくばくと心臓が煩い。
宍戸の首に回した腕を解く事が出来ない。立ち上がる事も出来ない。腰が抜けてしまったようだった。
「大丈夫か?」
「……うん。大丈夫だけど、もうちょっとこのままでいていいかな。」
「……おう。」
背中に回された宍戸の掌が暖かい。あたしを落ち着かせるようにトントンとリズミカルに優しく叩く。それに合わせて呼吸をすると、幾分か心臓も落ち着いてくれた。もう立ち上がれそうだ。
「なぁ、汐原。」
もう大丈夫、と宍戸から離れようとすると逆に強く抱きしめられる。
地面に腰を下ろして、立てた両膝の間にあたしを抱えたまま強く抱きしめられると、あたしは宍戸の耳元に頬を寄せ、彼の背後の景色を見る事しか出来ない。視界に入るポニーテールはもう少しで無くなってしまう。少しだけ寂しかった。
「お前さ……俺たちのだよな?」
「……え?」
その言葉を口にしたのががっくんだったなら、そうだよ、ときっと即答していた。でも実際に口にしたのは宍戸だったから。思わず困惑の声を上げる。
だって、彼は一度だってそんな素振りを見せなかった。何度も助けてはくれたが、あたしに対する執着心を見せたことなんて、一度も無かった。なのに、何でそんなこと。
「どうして、そんなこと……。」
彼の声色からは表情を伺うことはできない。だけど、彼の声は僅かに震えていた。
「お前、合宿始まってから立海のヤツらと仲良かっただろ。」
取られちまうんじゃないかって、と続ける彼にそれはない、と食い気味に反論する。がっくんと約束したというのもあるけど。それよりも。
「あたしはキミ達がいいんだよ。……氷帝がいいの。」
あたしを助けてくれたのは、氷帝の人だったから。だから、誰かのモノになるなら、あたしは氷帝の人が良かった。
あたしの言葉に宍戸がほぅ、と息を漏らす。そうか、とあたしの鼓膜を震わせた声はもう震えてはいなかった。