Target3:立海大付属中男子テニス部
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「汐原さん、好きだよ。」
今まで賑やかだった病室がしんと静まり返る。俺の言葉によって。奇声を上げた汐原さんは俺の言葉を冗談だと片付けた。こんなにも声は震えていたのに。
その彼女の名を初めて耳にしたのは仁王の口からだった。それは先月初めて聞いたのにも関わらず鮮明に思い出せる。
仁王の口から汐原さんの名前が出た時、単体ではなく昌山の名前もセットだった。
「俺のクラスに昌山とかいう転校生が来ての。どうやら汐原琹とかいう奴を探しとるみたいなんじゃ。」
始まりはそう、きっと仁王と同じだった。
特別関心があるでもなく、極端に無関心だと言うわけでもない。ただの雑談だったのだ。近況報告とでも言えばいいのか、見舞いに来てくれる際の土産話のような物。
仁王だけでなく、他の部員達もよく学校での出来事を話してくれる。それと同列だった。
その認識が変わったのは、
曰く、負けず嫌いで融通の効かない頑固者。
曰く、人に好かれるくせに好意を拒否する天邪鬼。
曰く、体力の無い平凡な女の子。
曰く、芯の強い泣き虫。
それぞれがそれぞれに主観的な印象を抱いていたが、そのどれもが汐原さんの親友を自称する昌山の印象とは噛み合わなくて。掴み所がない人物なんだ、と思っていたのに。
実際に蓮二に手を引かれて病室に入ってくる彼女を認めた瞬間に愛しさが胸に広がったのだ。それはもう、泣き出してしまいたい程に。喉から手が出るくらいに彼女が欲しいと、そう思ってしまったのだ。初対面だと言うのに。
人の気持ちに寄り添える人だ、と感じてしまって。
「俺は本気だよ。仁王や昌山がよくキミの話をしてくれてね。気がついたら好きになってたんだ。……可笑しな事を言っているかい?」
言っていて馬鹿だとそう思う。でも事実だった。彼女が欲しい、と自覚したのは今日が初めてだったかもしれないが、本当はもっと前から彼女を
先程彼女に触れる事を拒否された指先が震える。柄にもなく、彼女の答えが怖かった。
丸井の話では汐原さんは氷帝の部員と仲が良く、立海の部員からのスキンシップを拒絶しているようだったから。そしてそれを、身を持って実感してしまったから。
蓮二ではないけど、汐原さんに振られる確率は100%だった。
だが俺の予想とは裏腹に、汐原さんは仁王に話題を振り、それを切っ掛けに汐原さんが混乱の波に呑まれていく。仁王が柳生でいや違う、と小さく口元で繰り返して、仁王をジッと見つめる。ジリジリと嫉妬が胸を焦がした。
俺が彼女と過ごせる時間は余りにも短すぎる。